(更新日: 2025年11月24日)

盆栽を始めたばかりのあなた、おめでとうございます!小さな鉢の中に広がる自然の世界に、きっと心を奪われていることでしょう。
しかし、いざお手入れをしようとした時、最初の壁にぶつかっていませんか。
剪定や芽摘みに使うはさみですが、どれを選べば良いか迷いますよね?そう、それは数ある盆栽道具の中でも特に重要な「はさみ」選びです。
盆栽用ハサミと一言で言っても、その種類は実に様々です。
園芸店に行けば、値段も手頃なものから目を見張るような高級品までずらりと並んでいます。
100均でも似たようなはさみを見かけるけれど、本当にこれでいいのだろうかと不安になりますよね。
有名なメーカーである昌国や川澄の盆栽鋏は、一体何が違うのでしょうか。
この記事では、そんな盆栽初心者のあなたが抱える「はさみ」に関するあらゆる疑問にお答えします。
あなたにぴったりのおすすめ盆栽はさみが必ず見つかります。
まず、基本的な盆栽鋏の種類ごとの役割を分かりやすく解説し、あなたに必要な一本が見つかるようお手伝いします。
さらに、初心者におすすめの理由として、手入れが簡単なステンレス製のはさみや、最初に揃えると便利な盆栽道具のセットもご紹介します。
そして、大切なはさみを長く愛用するための、正しい研ぎ方についても触れていきます。
この記事を最後まで読めば、もう盆栽のはさみ選びで迷うことはありません。
あなたに最適な一本を見つけて、盆栽と向き合う時間をより豊かで楽しいものにしてください。
さあ、一緒に失敗しないおすすめの盆栽はさみを見つけにいきましょう。
記事の要約とポイント
- 盆栽用ハサミの基本的な種類が分かり、用途に合った選び方が身につく
- 100均と昌国など高級メーカーの盆栽鋏の違いを徹底比較できる
- 初心者におすすめなステンレス製やお得な盆栽道具セットがわかる
- 愛用のはさみを長く使うための正しい研ぎ方までマスターできる
目次 ➖
初心者向け盆栽はさみのおすすめな選び方と種類
盆栽の世界へようこそ。
小さな鉢の中に、雄大な自然の景色を映し出すこの奥深い趣味に、きっと胸を躍らせていることでしょう。
しかし、いざ枝葉に手をかけようとしたとき、ふと手が止まってしまう。
目の前には無数の盆栽道具が並び、特に「はさみ」という最初の相棒選びで、途方に暮れてはいませんか。
私も30年以上前、初めて手にした黒松の苗を前に、どんなはさみを使えばいいのか皆目見当もつかず、園芸店の棚の前で一時間も立ち尽くした苦い記憶があります。
この記事は、そんな過去の私と同じように、希望と少しの不安を胸に、盆栽との対話を始めようとしているあなたのための、いわば道しるべです。
さあ、一緒にあなただけの一本を見つけに行きましょう。
失敗しない盆栽はさみの選び方
盆栽用ハサミ
種類
100均
ステンレス
選び方
盆栽用ハサミの基本的な3つの種類と用途を解説。100均の道具で十分?数万円の高級盆栽鋏との違いも比較します。初心者には錆びにくく手入れが楽なステンレス製がおすすめ。失敗しない選び方の3つのポイントや、最初に揃えたい便利な盆栽道具セットも紹介します。
- まずは揃えたい盆栽用ハサミの基本的な種類と用途
- 100均で十分?高級盆栽鋏との価格と性能の違いを比較
- 手入れが簡単なステンレス製が初心者におすすめな理由
- 失敗しない盆栽はさみ選びで押さえるべき3つのポイント
- 何から買う?最初に便利な盆栽道具セットという選択肢
まずは揃えたい盆栽用ハサミの基本的な種類と用途
さて、盆栽用ハサミと一口に言っても、実のところ様々な種類があります。
それぞれに役割があり、まるで外科医が手術道具を使い分けるように、我々盆栽家も樹の種類や作業内容に応じてはさみを持ち替えるのです。
とはいえ、初心者がいきなり全てを揃える必要は全くありません。
まずは「これだけは持っておきたい」という基本的な3つの種類を覚えましょう。
それが「芽摘み鋏」「剪定鋏」「又枝切り」です。
感動を呼ぶ繊細さ、芽摘み鋏の世界
芽摘み鋏は、その名の通り、松の芽摘みや、雑木の新芽を整えるといった繊細な作業に使います。
刃が細く、小回りが利くのが特徴で、入り組んだ枝の間にもスッと刃先が入っていきます。
私が愛用している芽摘み鋏は、もう20年選手ですが、今でも春先の黒松の緑摘みの時期になると、まるで自分の指の延長のように働いてくれます。
チョキン、チョキンと小気味よい音を立てて、不要な芽を摘んでいく作業は、盆栽の醍醐味の一つと言えるでしょう。
この作業を怠ると、松は間延びした締まりのない姿になってしまいますから、非常に重要なのです。
力強く、かつ優しく。万能選手の剪定鋏
剪定鋏は、芽摘み鋏よりも少し刃が厚く、丈夫に作られています。
鉛筆くらいの太さの枝なら、これで問題なく切り落とすことができます。
楓や欅といった雑木類の、樹形を整えるための少し大胆な剪定で活躍しますね。
グリップがしっかりしているので、力を入れやすいのも特徴です。
ただし、力任せに太い枝を切ろうとすると、枝の切り口を潰してしまい、そこから枯れこむ原因にもなりますので注意が必要です。
あくまで「鋏」であることを忘れず、優しく、しかし確実に枝を切り取ることが肝心です。
美しい切り口の魔術師、又枝切り
そして、少し特殊な形状をしているのが又枝切りです。
これは、枝が幹から分岐している付け根から切り取りたいときに使います。
普通の剪定鋏で切ると、どうしても切り株が残ってしまいますが、又枝切りは刃が球形にえぐれているため、幹のラインに沿って枝をえぐり取るように切ることができるのです。
こうすることで、切り口の治り(カルスの巻き)が早くなり、数年後にはどこで枝を切ったのか分からなくなるほど自然に仕上がります。
これはまさに、盆栽を芸術の域に高めるための魔法の道具と言っても過言ではありません。
これら3本が、いわば盆栽はさみの三種の神器です。
まずは、ご自身の育てる盆栽がどんな種類で、どんな作業が中心になるかを考えて、最初の一本を選んでみてはいかがでしょうか。
| はさみの種類 | 主な用途 | 特徴 | 対象となる樹種の例 |
| 芽摘み鋏 | 新芽摘み、小枝の整理、葉刈り | 刃が細く長く、繊細な作業向き | 黒松、赤松、五葉松、杜松 |
| 剪定鋏 | 不要な枝の剪定、根の整理 | 刃が厚く丈夫で、汎用性が高い | 楓、欅、桜、梅、真柏 |
| 又枝切り | 枝を付け根から切り取る作業 | 刃が球状で、切り口をえぐれる | ほぼ全ての樹種 |
100均で十分?高級盆栽鋏との価格と性能の違いを比較
ここで多くの初心者がぶつかる疑問が、「100均のはさみではダメなのか?」という問題でしょう。
かく言う私も、盆栽を始めて間もない頃、お金がなくて100円ショップの工作用はさみで代用しようとしたことがあります。
結論から言えば、それは大きな間違いでした。
忘れられない、最初の失敗談
あれは梅雨入り前の蒸し暑い日でした。
手に入れたばかりの樹齢5年ほどの五葉松。
伸びすぎた枝を一本、剪定しようとその100均のはさみで枝に刃を当てました。
力を込めて、パチン!という鈍い音。
しかし、枝は切れていませんでした。
それどころか、枝の繊維がグシャリと潰れ、見るも無残な姿になっていたのです。
結局その枝は、そこから病気が入り、枯れてしまいました。
たった数百円を惜しんだせいで、数年かけて育まれた命の一部を、私は自らの手で奪ってしまったのです。
あの時の罪悪感と、松への申し訳なさは今でも忘れられません。
この経験から私が学んだのは、盆栽道具、特に刃物は「安物買いの銭失い」では済まないということです。
では、100均のはさみと、数千円、あるいは数万円もする高級な盆栽鋏とでは、具体的に何が違うのでしょうか。
-
100均のはさみと専門の盆栽鋏では、そんなに切れ味が違うものなのですか?
-
はい、全くの別物と考えてください。主な違いは「鋼の材質」「刃の薄さ」「刃の合わせ(すり合わせ)」の3点にあります。100均のものは柔らかい鉄でできているため刃がすぐに鈍り、枝の繊維を潰してしまいます。専門の鋏は、硬く粘りのある鋼を使い、職人が丹念に刃を薄く研ぎ上げ、二枚の刃が吸い付くように合わさるため、植物の細胞を壊さずに切断できるのです。
その違いは、主に以下の3つの要素に集約されます。
- 鋼(はがね)の材質と焼き入れ
専門の盆栽鋏は、日本刀と同じように、硬度と粘りを両立させた高品質な鋼を使用しています。
職人が何度も火入れと鍛造を繰り返し、最適な焼き入れを施すことで、鋭い切れ味が長く持続する刃が生まれるのです。
一方、安価なはさみは、いわばただの鉄の板です。
すぐに刃こぼれしたり、曲がったりしてしまいます。 - 刃の薄さと形状
良い盆栽鋏は、刃先が驚くほど薄く、鋭利に作られています。
これにより、枝の細胞を破壊することなく、スパッと切断することができます。
切り口が綺麗だと、植物の治癒も早く、病気にもかかりにくくなります。
100均のはさみで切った枝の断面をルーペで見ると、繊維が潰れてギザギザになっているのがよく分かりますよ。 - 刃の合わせ(すり合わせ)の精度
はさみは、二枚の刃が合わさることで物を切ります。
この合わせの精度が、切れ味を左右する非常に重要な要素です。
高級な盆栽鋏は、職人が手作業でミクロン単位の調整を行い、二枚の刃が吸い付くように動きます。
この精度の高さが、軽く力を加えるだけで枝が切れる、あの独特の感触を生み出すのです。
もちろん、だからといって最初から何万円もする高級品を買う必要はありません。
今は3,000円から5,000円程度の価格帯でも、十分に使える品質の盆栽鋏が手に入ります。
100均の道具で盆栽を傷つけてしまうリスクを考えれば、それは決して高い投資ではないと、私は断言できます。
手入れが簡単なステンレス製が初心者におすすめな理由
さて、盆栽鋏の材質には、大きく分けて「鋼(はがね)」と「ステンレス」の二種類があります。
我々プロや、長年盆栽を嗜んでいる愛好家の多くは、鋼製のはさみを好んで使います。
その理由は、鋼ならではの「粘りのある切れ味」にあります。
言葉で表現するのは難しいのですが、枝を切ったときに「スッ…」と刃が食い込んでいくような、あの感触は鋼ならではのものです。
しかし、この鋼製のはさみには一つだけ弱点があります。
それは、「錆びやすい」ということです。
特に、松ヤニなどが付着したまま放置したり、濡れたままにしておくと、一晩で真っ赤に錆びてしまいます。
手入れを怠ると、せっかくの切れ味も台無しです。
毎日、作業が終わったら専用のクリーナーで汚れを落とし、椿油を薄く塗って保管する。
この手間を愛おしいと思えるようになれば一人前ですが、初心者の方にとっては少しハードルが高いかもしれません。
そこで、私が初心者の方にまずおすすめしたいのが、ステンレス製の盆栽はさみです。
ステンレス製のメリット
- 錆びにくく、手入れが楽: これが最大の利点です。使用後にさっと水洗いして乾かすだけで、錆びる心配がほとんどありません。忙しい方や、こまめな手入れに自信がない方には、まさにうってつけと言えるでしょう。
- 清潔感がある: 銀色に輝く見た目は、清潔感があり、使っていて気持ちが良いものです。ヤニ汚れなども目立ちやすいので、掃除のタイミングも分かりやすいですね。
- 価格が比較的手頃: 一般的に、同程度の品質であれば、鋼製のものよりもステンレス製の方が少し安価に手に入ることが多いです。
もちろん、デメリットがないわけではありません。
鋼に比べて硬度が高いため、切れ味という点では鋼製に一歩譲ると言われています。
また、一度刃こぼれすると、硬いぶん研ぎにくいという側面もあります。
とはいえ、最近のステンレス加工技術の進歩は目覚ましく、一昔前のステンレス製はさみとは比べ物にならないほど切れ味が向上しています。
正直なところ、初心者の方が使う分には、その切れ味の違いを感じることはほとんどないでしょう。
まずは手入れの簡単なステンレス製のはさみで盆栽作業に慣れ、物足りなくなってきたら、次のステップとして鋼製のはさみに挑戦してみる。
これが、私がおすすめする賢い盆栽はさみとの付き合い方です。
道具の手入れに追われて盆栽そのものが嫌になってしまっては、元も子もありませんからね。
失敗しない盆栽はさみ選びで押さえるべき3つのポイント
では、いよいよ実際に盆栽はさみを選ぶ段階です。
お店には様々なメーカーの、様々なサイズのはさみが並んでいます。
ここで闇雲に選んでしまうと、「使いにくい」「すぐに切れなくなった」といった失敗につながります。
そうならないために、必ず押さえておきたい3つのポイントを伝授しましょう。
- 驚くほど大事!自分の手の大きさに合わせる
これは意外と見落としがちなのですが、はさみは自分の手の大きさに合ったものを選ぶのが鉄則です。
特に女性や手の小さい方は、一般的なサイズ(全長200mm前後)のはさみだと、持て余してしまうことがあります。
大きすぎるはさみは扱いにくく、繊細な作業がしにくいだけでなく、余計な力が必要になるため疲れやすいのです。
可能であれば、実際にお店で手に取ってみて、グリップを握った時にしっくりくるか、無理なく開閉できるかを確認してください。
最近は、少し小ぶりなサイズのはさみも多く販売されています。
通販で購入する場合は、全長だけでなく、刃渡りやハンドルの大きさなどのスペックをしっかり確認しましょう。 - 育てる盆栽のサイズ感をイメージする
あなたがこれから育てたい盆栽は、手のひらに乗るようなミニ盆栽ですか?
それとも、ある程度の大きさがある中品盆栽でしょうか。
当然ながら、扱う盆栽のサイズによって、適したはさみの大きさも変わってきます。
ミニ盆栽であれば、小回りの利く小さめの芽摘み鋏が一本あれば、ほとんどの作業をこなせるでしょう。
逆に、幹や枝が太い中品盆栽がメインであれば、少し大きめの剪定鋏が必要になります。
自分がどんな盆栽と向き合いたいのかをイメージすることが、最適な道具選びの第一歩なのです。 - 信頼できるメーカーのものを選ぶ
先ほども少し触れましたが、盆栽はさみは信頼できる専門メーカーのものを選ぶことを強くおすすめします。
無名の安価な製品の中には、材質や焼き入れが不十分なものも多く、すぐに切れ味が落ちてしまう「安物買いの銭失い」になりがちです。
後ほど詳しく紹介しますが、例えば「兼進」や「喜久和」といったメーカーは、品質が安定しており、全国の園芸店やホームセンターでも比較的手に入りやすいので、初心者の方には特におすすめです。
こうしたメーカーの製品であれば、たとえ一番安いモデルであっても、最低限の品質は保証されています。
盆栽道具は、あなたの盆栽ライフを長く支えてくれる大切な相棒です。
目先の価格だけでなく、長く使えるかどうかという視点で選んであげてください。
この3つのポイントを頭に入れておけば、きっとあなたにぴったりの一本が見つかるはずです。
何から買う?最初に便利な盆栽道具セットという選択肢
ここまで、はさみを単品で選ぶことを前提にお話ししてきましたが、もう一つの選択肢として「盆栽道具セット」というものがあります。
これは、初心者が必要とするであろう基本的な道具が、数点セットになって販売されているものです。
セット商品のメリット
- 何を選べばいいか分からない、という悩みが解決する: これが最大のメリットでしょう。基本的なはさみやピンセット、針金切りなどが一通り揃っているので、すぐに盆栽の手入れを始めることができます。
- 単品で揃えるより割安な場合が多い: 一般的に、同じ品質のものを一つずつ買い揃えるよりも、セットで購入した方がトータルの金額は安くなる傾向にあります。
- 専用ケース付きで収納に便利: 多くのセット商品には、道具をまとめて収納できる専用のケースが付属しています。これにより、道具をなくしたり、刃先を傷つけたりするのを防ぐことができます。
一方で、知っておきたいデメリット
- 使わない道具が含まれている可能性がある: セット内容によっては、今の自分には必要ない道具や、品質が今ひとつな道具が含まれていることもあります。
- 道具一つ一つの品質は、単品の高級品には及ばない: 当然ですが、セット商品はあくまで入門用という位置づけです。それぞれの道具の品質は、専門メーカーが作る単品の高級品にはかないません。
では、セットと単品、どちらを選ぶべきか。
これは、あなたの性格や盆栽との向き合い方によるところが大きいでしょう。
「とにかく早く始めたい」「細かいことを考えるのは苦手」という方であれば、まずは手頃な価格の盆栽道具セットから始めてみるのが良い選択です。
一方、「道具は一つ一つこだわりたい」「無駄なものは持ちたくない」という方であれば、先ほど紹介した3つの基本のはさみの中から、今の自分に最も必要な一本をじっくり選んで購入する方が、満足度は高いかもしれません。
どちらが正解ということはありません。
大切なのは、あなたが納得して、愛着を持って使える道具を手に入れることです。
セット商品も、今では様々なメーカーから特色のあるものが販売されています。
内容をよく吟味して、自分のスタイルに合ったものを選んでみてください。
【厳選】おすすめの盆栽はさみ人気メーカーと研ぎ方
さあ、ここからはより具体的に、私が長年の経験の中で信頼できると感じた盆栽はさみのメーカーと、その大切な相棒を長く使い続けるためのメンテナンス方法についてお話ししていきましょう。
どんなに素晴らしいはさみを手に入れても、手入れを怠ればただの鉄の塊になってしまいます。
道具を慈しみ、育てることもまた、盆栽の道の一部なのです。
良い道具は、使い込むほどに手に馴染み、作り手の魂と使い手の愛情が宿っていく。
私はそう信じています。
おすすめ盆栽はさみ人気メーカー3選
おすすめ
メーカー
昌国
川澄
研ぎ方
初心者におすすめの定番はさみメーカー3選を厳選して紹介。さらに本格志向の方へ、昌国や川澄といった高級メーカー製盆栽鋏の魅力も解説します。大切な盆栽道具の切れ味を保つための正しい研ぎ方も写真付きで分かりやすくレクチャー。あなたにぴったりのメーカーが見つかります。
- 初心者におすすめの定番はさみメーカー3選
- 本格派に人気の高級メーカー昌国・川澄の盆栽鋏
- 切れ味が復活する!盆栽はさみの正しい研ぎ方
- 盆栽はさみおすすめの選び方と使い方まとめ
初心者におすすめの定番はさみメーカー3選
世の中には数多くの盆栽道具メーカーがありますが、その中でも特に品質が安定しており、初心者の方でも安心して使える定番メーカーを3社、厳選してご紹介します。
これらのメーカーの製品であれば、まず間違いはないでしょう。
- 兼進刃物製作所(かねしん)
岐阜県関市に拠点を置く、盆栽道具の専門メーカーです。
プロの盆栽作家からの信頼も厚く、その品質は折り紙付き。
幅広いラインナップを揃えていますが、特に初心者におすすめなのが「ステンレス製 又枝切」です。
少し値段は張りますが、その切れ味と耐久性は、一度使うと他のものが使えなくなるほど。
最初にしっかりしたものを一つ、と考えている方には最適の選択肢です。 - 株式会社 喜久和(きくわ)
新潟県三条市、言わずと知れた金物の町で盆栽道具を作り続ける老舗メーカーです。
喜久和の製品は、全国のホームセンターなどでも取り扱いが多く、手に入りやすいのが魅力。
品質と価格のバランスが非常に良く、コストパフォーマンスに優れています。
「盆栽鋏」や「さつき鋏」といった基本的なはさみは、初心者にとって最初の相棒として十分すぎる性能を持っています。
何を買うか迷ったら、まず喜久和の製品を探してみるのが良いでしょう。 - 岡恒(おかつね)
広島県に本社を置く、剪定鋏のトップメーカーです。
厳密には盆栽専用メーカーではありませんが、その「剪定鋏 ユニーク」シリーズは、多くの庭師や農家から絶大な支持を得ています。
特徴的な赤と白のハンドルは、一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。
その抜群の切れ味と驚くほどの耐久性は、盆栽の中品〜大品クラスの少し太い枝を切る際に、絶大な威力を発揮します。
雑木盆栽をメインに育てたいと考えているなら、岡恒の剪定鋏は持っていて損のない一本です。
これらのメーカーは、いずれも長年にわたって日本の園芸文化を支えてきた、信頼と実績のある企業です。
それぞれの製品に、職人たちの誇りと情熱が込められています。
本格派に人気の高級メーカー昌国・川澄の盆栽鋏
盆栽の世界に深くのめり込んでいくと、いつかは手にしたいと誰もが憧れる、至高の盆栽道具が存在します。
それが、千葉県に工房を構える「昌国(まさくに)」と、知る人ぞ知る名工「川澄(かわすみ)」の作る盆栽鋏です。
これらは単なる道具ではなく、もはや工芸品、芸術品の域に達していると言えるでしょう。
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昌国の鋏は何がそんなに違うのですか?
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昌国の道具の神髄は、初代・川澄昌國氏が発明した「喰い切り」という独特の構造と、完璧なまでに仕上げられた刃のすり合わせにあります。二枚の刃が合わさるのではなく、片方の刃がもう片方の刃に「喰い込む」ように切れるため、信じられないほど軽い力で、太い枝でさえも綺麗に切断できます。そして、その使い心地は一度味わうと忘れることができません。手に伝わる振動、切れる音、全てが他の鋏とは一線を画します。
昌国 – 道具の王様
昌国の道具は、盆栽界では一つのステータスシンボルとも言えます。
特に「又枝切鋏」や「針金切」は、プロの盆栽作家でその名を知らない者はいません。
一本一本が職人の手によって丹念に作られ、その切れ味、耐久性、そして何よりも使い心地は、他の追随を許しません。
価格も数万円から十数万円と非常に高価ですが、それは一生、いや、手入れをすれば次の世代にまで受け継ぐことができるほどの価値があるからです。
いつか、自分の育てた盆栽が展示会で飾られるような腕前になった時、その手に昌国の道具を握っている。
そんな夢を抱くのも、盆栽家の楽しみの一つではないでしょうか。
川澄 – 切れ味の探求者
川澄の盆栽鋏は、知る人ぞ知る逸品です。
その特徴は、何と言っても「切れ味」への異常なまでのこだわりにあります。
選び抜かれた最高の鋼を、独自の鍛錬法で鍛え上げ、剃刀のように鋭い刃先に仕上げる。
川澄の鋏で切った枝の断面は、まるで鏡のように滑らかで、植物へのダメージを最小限に抑えます。
生産数も少なく、なかなか手に入れることはできませんが、多くの愛好家がその一本を求めて探し回っています。
これらの高級な盆栽道具は、決して初心者向けの選択肢ではありません。
しかし、盆栽という道の先に、このような素晴らしい道具の世界が広がっていることを知っておくのは、決して無駄なことではないはずです。
切れ味が復活する!盆栽はさみの正しい研ぎ方
どんなに優れたはさみも、使っていれば必ず切れ味は落ちてきます。
特に、松ヤニや樹液は、刃に付着して切れ味を鈍らせる大きな原因となります。
切れ味の落ちたはさみを使い続けることは、盆栽を傷つけるだけでなく、作業の効率を下げ、何より楽しくありません。
そこで重要になるのが、「研ぎ」というメンテナンスです。
しかし、ここでまた私の失敗談をお話しなければなりません。
刃をダメにした、若気の至り
20代の頃、愛用していた剪定鋏の切れ味が落ちてきたときのことです。
私は、ろくな知識もないまま、家にあったコンクリートブロックの角で刃をゴシゴシと擦ってしまったのです。
「少しはマシになるだろう」などと安易に考えていました。
結果は、言うまでもありません。
刃先はガタガタになり、刃の角度も滅茶苦茶。
二枚の刃はまともに噛み合わなくなり、もはやはさみとしての機能を失ってしまいました。
尊敬する師匠に泣きついたところ、こっぴどく叱られた後、「道具を大事にできん奴は、盆栽も大事にできん」と諭されました。
あの時の言葉は、今でも私の胸に深く刻まれています。
この失敗から、私は刃物の研ぎ方を一から必死で学びました。
正しい研ぎ方さえ覚えれば、はさみは何十年と使い続けることができるのです。
ここでは、家庭でもできる基本的な研ぎ方の手順をご紹介します。
準備するもの
- 砥石(といし): まずは「中砥石(#1000程度)」を一つ用意しましょう。刃こぼれがひどい場合は「荒砥石(#200~#400)」、仕上げには「仕上げ砥石(#3000以上)」があると万全ですが、まずは中砥石があれば十分です。砥石の品質については、こちらの「砥石 – Wikipedia」のページも参考に、適切なものを選んでください。
- 刃物用椿油
- きれいな布(ウエス)
- 錆び取りクリーナー(あれば)
研ぎ方の手順
- 砥石の準備: 砥石を使用前に15分~30分ほど水に浸し、十分に水分を含ませます。
- 汚れの除去: はさみに付着したヤニや錆を、クリーナーや布できれいに拭き取ります。
- 刃の角度を確認: はさみの刃には、元々「刃角」という角度がついています。この角度を変えないように研ぐのが最も重要です。
- 研ぎ(表刃): 砥石を平らな場所に置き、はさみの刃の、角度がついている面(表刃)を砥石にぴったりと当てます。刃の角度を保ったまま、刃元から刃先に向かって、スーッ、スーッと押すように研いでいきます。この時、力を入れすぎないのがコツです。数回研ぐと、刃の裏側に「カエリ」という金属のまくれが出てきます。刃全体にカエリが出たら、表刃の研ぎは完了です。
- カエリ取り(裏刃): 次に、刃の裏側を砥石にぴったりと当て、カエリを取るように軽く1~2回撫でます。裏側は絶対に研ぎ込んではいけません。あくまでカエリを取るだけです。
- 洗浄と注油: 研ぎ終わったら、はさみをきれいに水で洗い、水分を完全に拭き取ります。その後、刃や可動部に椿油を薄く塗布して完了です。
最初は難しく感じるかもしれませんが、何度か繰り返すうちに必ずコツが掴めます。
自分で研いだはさみの切れ味が蘇った時の感動は、ひとしおですよ。
どうしても自信がない場合は、金物店や専門の研ぎ屋さんにお願いするのも一つの手です。
盆栽はさみおすすめの選び方と使い方まとめ
長い道のりでしたが、これであなたも盆栽はさみ選びの達人への第一歩を踏み出しました。
最後に、これまでの話をまとめ、盆栽という素晴らしい趣味を長く楽しむための心構えをお伝えしたいと思います。
私たちは、ただ枝を切っているのではありません。
一本のはさみを通して、樹と対話し、その生命の未来を形作っているのです。
だからこそ、その対話の道具である「はさみ」選びは、かくも重要で、そして楽しいものなのです。
100均のはさみで盆栽を傷つけてしまった私の失敗談を思い出してください。
道具選びは、あなたの盆栽への愛情の表れでもあります。
最初は手頃なステンレス製のはさみで構いません。
大切なのは、その一本を慈しみ、手入れをしながら長く使い続けることです。
そして、いつかあなたの腕が上達し、より繊細な作業がしたくなった時、昌国や川澄といった名工の作る高級な盆栽鋏を、自分へのご褒美として手に入れる日を夢見てください。
その一本は、きっとあなたの盆栽ライフを、さらに豊かで奥深いものへと導いてくれるでしょう。
盆栽は、数十年、数百年という時間をかけて完成していく、生きた芸術です。
その壮大な物語の担い手として、あなたは今、スタートラインに立ったのです。
さいたま市大宮盆栽美術館の公式サイト「盆栽とは – さいたま市大宮盆栽美術館」にもあるように、盆栽は日本の文化として世界に誇るべきものです。
あなたがお持ちの一鉢も、その歴史の一部なのです。
焦る必要はありません。
あなたの選んだ最高の一本を手に、目の前にある小さな命と、じっくりと向き合ってみてください。
チョキン、という小気味よい音と共に、あなたの盆栽との物語が、今、始まります。
この素晴らしい世界を、心ゆくまで楽しんでくれることを、一人の先輩として、心から願っています。
もしまた道に迷うことがあれば、いつでもこの記事に戻ってきてください。




