草刈り機で竹を切る!初心者向けチップソーの選び方完全ガイド

(更新日: 2025年10月3日)

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草刈り機で竹を切る!初心者向けチップソーの選び方完全ガイド

庭の隅でいつの間にか増えている竹や、放置されて手に負えなくなった竹藪の処理に頭を悩ませていませんか。

お手持ちの草刈り機で何とかしようとしても、普通の刃ではすぐに切れ味が落ちたり、硬い竹に弾かれて危険な思いをしたりと、なかなか作業が進まないものです。

実は、その悩みは道具選びで解決できます。

適切な竹用チップソーを装着するだけで、あなたの愛用の草刈機が、まるで専用の竹刈り機のようにパワフルなツールへと生まれ変わるのです。

この記事では、草刈り機での作業が初めてという初心者の方でも、安全かつ効率的に竹を切るために欠かせない、竹切り用チップソーの選び方をゼロから徹底的に解説します。

笹竹や細い竹が相手の場合と、密集した竹藪を相手にする場合では、選ぶべき竹刈刃も変わってきます。

刃の数や形状、耐久性といったプロがチェックするポイントを分かりやすくお伝えするので、もう刃の選択で迷うことはありません。

さらに、切った竹をその場で細かく粉砕する方法や、どうしても刈払機では対応が難しい太い竹に有効なレシプロソーという選択肢まで、竹の処理に関するあらゆる情報を網羅しました。

この記事を最後まで読めば、あなたに最適な一枚が必ず見つかり、これまで苦労していた竹の処理が驚くほど簡単で安全な作業に変わることをお約束します。

記事の要約とポイント

  • あなたの草刈機(刈払機)が最強の竹刈り機に変わる、最適な竹用チップソーの選び方がわかる。
  • 笹竹や細い竹、そして難易度の高い竹藪まで、状況に応じた最適な竹刈刃を見極められるようになる。
  • 草刈り機で安全に竹を切るための、プロが実践する具体的な手順と危険回避のコツが身につく。
  • 切った竹の山に困らない、効率的な粉砕方法や、太い竹に有効なレシプロソーの活用法までわかる。

草刈り機で竹を切る!失敗しない竹切り用チップソーの選び方

まずは、草刈機と一口に言っても、一般的に私たちがイメージする肩にかけて操作するタイプのものから、車両タイプの物、ラジコンなど様々な種類があります。

コメリではそんな草刈機の種類や用途についても詳しく解説していますので、まずは草刈機に対する知識を深めておきましょう。

最近ではバッテリーや充電器の性能が格段に上がった為、軽量・充電式ながらエンジン草刈り機とそん色ないパワーが発揮できるのが特徴です。

\圧倒的パワーかつ高性能!長時間使える充電式草刈機/

鬱蒼と茂る竹藪を前に、どうしたものかと途方に暮れていませんか。「いつもの草刈りの刃じゃ、まるで歯が立たない…」そんな経験、一度や二度はあるかもしれません。私も30年以上この仕事に携わっていますが、初めて竹藪を任されたあの日、刃が竹に弾かれる「カンッ!」という乾いた音に、背筋がゾッとしたものです。あのズッシリと重い絶望感。しかし、どうかご安心ください。正しい道具、つまり竹を切るために特別に設計された竹用チップソーさえ選べば、あの手強かった竹藪も、まるでバターを切るようにスルスルと切り開いていけるのですから。この記事は、単なる道具の選び方を解説するものではありません。私が現場で汗と、時には血を流しながら学んだ、竹と対話するための知恵そのものをお話しさせていただきます。

竹用チップソー

竹藪

笹竹

草刈機

刈払機

  • ① 刃数を確認!笹竹・細い竹には40P、竹藪には60P以上
  • ② 刃の形状!最適な竹刈刃はチドリ刃か衝撃に強い両刃か
  • ③ あなたの草刈機を最強の竹刈り機にする適合排気量
  • ④ 刃の厚み!1.25mm以上なら耐久性が高く長く使える
  • ⑤ フッ素コーティングの有無でメンテナンスの手間が激減

① 刃数を確認!笹竹・細い竹には40P、竹藪には60P以上

大抵の方が竹だけではなく、自宅の草も通常のチップのように切断したいと考えていると思います。

草刈機のチップソーには、竹専用のものと、オールラウンドで使える製品が存在し、それがツムラのチップソーです。

\あらゆる状況に対応!竹も切れるツムラのL-52/

さて、竹切り用チップソーを選ぶ上で、まず最初に確認すべき最も重要な指標が「刃数」です。専門用語で「P(ピッチ)」と表記されることもありますが、これは単純に円盤に付いている超硬チップの数を指しています。この数が、あなたの作業効率と仕上がりを大きく左右すると言っても過言ではありません。

一般的な見解として、刃数が少ないチップソーは一つ一つの刃にかかる負担が少ないため、パワーをロスしにくく、ザクザクと荒々しく切り進むことができます。反対に、刃数が多いものは、一回転で対象物に当たる回数が増えるため、非常に滑らかで美しい切れ口になる反面、抵抗も大きくなる傾向にあります。では、竹を切る際にはどちらを選べば良いのでしょうか。

私がまだこの道に入って間もない頃、親方から「健太、あそこの笹竹を刈ってこい」と指示されたことがありました。若かった私は「笹竹なんて、雑草みたいなもんだろ」と高をくくり、いつも使っている刃数の少ない雑草用の刃で意気揚々と現場に向かったのです。しかし、いざ刈り始めると、刃が笹に絡まるばかりで一向に進まない。笹は一本一本は細いですが、束になると信じられないほど粘り強く、しなって刃の力を逃がしてしまうのです。半べそで親方の元へ戻ると、「馬鹿野郎、笹はな、束になると手強いんだ。竹用チップソーの40Pを使え」と一喝されました。言われた通りに刃を交換して再び挑むと、どうでしょう。さっきまでの苦労が嘘のように、サク、サク、と小気味よい音を立てて笹竹が刈り取られていくではありませんか。この経験から、対象物に合わせた刃数選びがいかに重要かを骨身に染みて学びました。

具体的に数字で考えてみましょう。直径3cm未満の笹竹や、まだ若い細い竹が相手であれば、40P前後の竹用チップソーで十分に対応可能です。抵抗が少なく軽快に作業できるため、雑草も混じっているような場所では特に重宝します。
一方で、人の腕ほどの太さがある孟宗竹などが密集する本格的な竹藪に挑むのであれば、60P以上の多刃数のチップソーが必須となります。なぜなら、刃数が多いほど、一回転で竹の硬い繊維を細かく、まるでヤスリで削り取るように切断できるからです。

少し計算してみましょうか。例えば、一般的な草刈機(刈払機)のエンジン回転数が7000rpm(1分間に7000回転)だとします。
このデータを基に、1秒あたりの刃の打撃回数を算出してみます。

  • 取得方法:エンジン回転数は製品スペック、刃数はチップソー本体に記載されています。
  • 計算式:1秒あたりの切断回数 = (エンジン回転数 ÷ 60秒) × 刃数
  • 結果(40Pの場合):(7000回転 ÷ 60秒) × 40刃 ≈ 4667回/秒
  • 結果(60Pの場合):(7000回転 ÷ 60秒) × 60刃 = 7000回/秒

一秒間あたり2300回以上も多く、刃が竹に当たっている計算になります。この圧倒的な打撃数の差が、硬い竹に対する滑らかな切れ味の違いとなって現れるのです。あなたの目の前にあるのは、可愛らしい笹竹ですか?それとも、天を突くような猛々しい竹藪でしょうか?まずはそこから、最適な刃数を選んでみてください。

刃数 (P)主な対象特徴
36P~40P直径3cm未満の笹竹、細い竹抵抗が少なく軽快に作業できる。雑草も混じる場所向き。
50P~60P直径3~6cmの竹が混じる竹藪竹専用設計の主流。切れ味と耐久性のバランスが良い。
60P以上密集した硬い竹藪、太い竹非常に滑らかな切れ口。ただし、パワーのある刈払機が必要。

② 刃の形状!最適な竹刈刃はチドリ刃か衝撃に強い両刃か

刃数を選んだら、次に注目すべきはチップの「形状」です。竹切り用の竹刈刃には、大きく分けて「チドリ刃」と「両刃」という二つの形状が存在し、それぞれに一長一短があります。この違いを理解せずに選んでしまうと、せっかくのチップソーがすぐにダメになってしまうこともありますので、しっかりと特徴を掴んでおきましょう。

あれは1998年の夏だったでしょうか。千葉県君津市の山中で、放置された竹林の整備を請け負った時のことです。その現場は、地面にこぶし大の石がゴロゴロと転がっている、なかなかに厄介な場所でした。私はその日、切れ味を重視して新品のチドリ刃をおろし、意気揚々と作業を開始しました。チドリ刃の切れ味は素晴らしく、面白いように竹が切れていきます。しかし、開始からわずか30分ほど経った頃、足元の石に気づかず「ガツンッ!」と刃を当ててしまったのです。確認すると、見事に3つのチップが根元から吹き飛んでいました。一日も持たずに高価な刃をダメにしてしまい、悔しい思いで師匠に報告すると、「現場を見ろ。ここは両刃が向いてるんだよ」と、静かに諭されました。

師匠の言う通り、両刃のチップソーに交換して作業を再開すると、その違いは歴然でした。多少、石に刃が当たっても、チップが欠けることなく作業を続けられるのです。切れ味こそチドリ刃に一歩譲るものの、この安心感は何物にも代えがたい。この一件で、私は「道具は適材適所」という、プロとして最も基本的な教訓を改めて胸に刻みました。

ここで、二つの形状について詳しく解説しましょう。
チドリ刃は「アサリ分け」とも呼ばれ、ノコギリの刃のように、左右のチップが交互に少しだけ外側へ振り分けられている形状をしています。この「アサリ」があるおかげで、切り口の幅が刃の台金よりも広くなり、摩擦抵抗が減少。切り屑の排出もスムーズになるため、非常に鋭く、滑らかな切れ味を実現します。しかし、その構造上、チップの側面が剥き出しになるため、石などの硬い障害物に当たった際の横からの衝撃には弱い、という宿命的な弱点を抱えています。

一方、両刃は左右対称のシンプルな形状で、チップが台金にしっかりと埋め込まれるように取り付けられています。そのため、衝撃に対する強度が高く、多少ラフに扱っても刃こぼれしにくいのが最大の特長です。

「じゃあ、いつでも頑丈な両刃を選んでおけば間違いないのか?」と聞かれれば、答えは「いいえ」です。石などの障害物がほとんどない、手入れの行き届いた綺麗な竹林で、とにかくスピーディーに、そして切り口を美しく仕上げたいという場面では、チドリ刃の圧倒的な切れ味が光ります。切った後の竹を加工して何かに利用する、といった目的があるなら、なおさらチドリ刃を選ぶべきでしょう。

要するに、あなたがこれから向かう現場の状況をどう読み解くか。地面の状態、竹の密度、そして作業の目的。それらを総合的に判断して、最適な刃の形状を選ぶことが肝心なのです。

項目チドリ刃(アサリ刃)両刃
切れ味◎ 非常に鋭い〇 良好
耐久性(対衝撃)△ 弱い◎ 強い
おすすめの現場石や障害物が少ない綺麗な竹林石や障害物が多い荒れた現場
切り口非常に滑らかやや粗め

③ あなたの草刈機を最強の竹刈り機にする適合排気量

最高の竹用チップソーを選んだとしても、それを動かす草刈機本体、つまり刈払機のパワーが不足していては宝の持ち腐れになってしまいます。まるで、最高級のスポーツカーに軽自動車のエンジンを積むようなものです。ここでは、あなたの草刈機を最強の竹刈り機へと変身させるための、エンジン排気量との相性についてお話しします。

一般的に、草刈機のパワーはエンジンの排気量(cc)に比例します。排気量が大きければ大きいほど、トルク(回転する力)が強くなり、硬い竹にも負けずに刃を回し続けることができます。しかし、ここで陥りがちなのが「大は小を兼ねる」という考え方です。

例えば、ホームセンターなどでよく見かける23ccクラスの小型・軽量な草刈機。これは主にナイロンコードでの草刈りや、柔らかい雑草を刈ることを想定して作られています。この機械に、先ほどお話ししたような60P以上の多刃で重い竹用チップソーを装着するとどうなるでしょうか。エンジンは刃の重さと、竹を切る際の抵抗に負けてしまい、回転数が著しく低下します。スロットルを全開にしても「ブォォン…」と苦しそうな音を立てるだけで、竹に刃が食い込んでいかない。それどころか、エンストしてしまうことさえあるのです。

私にも、まだ自分の機械を持てなかった新人時代、こんな経験があります。いつも使っていた会社の23cc機では竹藪の仕事が全くはかどらず、見かねた先輩が「俺のを使ってみろ」と、30ccクラスのプロ用刈払機を貸してくれました。その機械のパワーは、まさに別次元でした。今まであれほど手こずっていた竹が、面白いように切れていく。まるで熱したナイフでバターを切るような感覚に、私はすっかり魅了されてしまいました。しかし、その感動も束の間。作業を終える頃には、その重さと強烈な振動で腕がパンパンになり、翌日は全身がひどい筋肉痛に見舞われたのです。この経験を通して、ただパワーがあれば良いというものではなく、自分の体力や作業時間、そして対象物との総合的なバランスを見極めることの重要性を学びました。

あなたの草刈機を最大限に活かすための、排気量の目安は以下の通りです。

  • 23ccクラス前後:このクラスの草刈機で挑戦するなら、笹竹や直径3cm以下の細い竹が限界だと考えてください。チップソーも、できるだけ軽量な40P程度のものを選ぶのが賢明です。
  • 26ccクラス:パワーと重量のバランスが最も取れた、いわば「万能選手」です。一般家庭の裏山からプロの現場まで、幅広い用途に対応できます。私たちが現場で最も多用するのもこのクラスで、40Pから60Pまでのほとんどの竹用チップソーの性能をしっかりと引き出してくれます。もし、これから竹を切るために新しい草刈機の購入を検討しているなら、まずはこの26ccクラスをおすすめします。
  • 30cc以上:これはもう、完全にプロ向けのハイパワー仕様です。密集した硬い竹藪や、かなり太い竹を相手にする場合でも、力負けすることはありません。ただし、その分、機体は重く、振動も大きくなり、燃費も悪化します。相応の体力と覚悟が求められる、まさに玄人向けの機械と言えるでしょう。

作業を始める前に、ご自身の愛機のエンジン部分に貼られているラベルを確認してみてください。そこに記された排気量が、あなたの竹切り作業のポテンシャルを決定づける、一つの重要な鍵なのです。

④ 刃の厚み!1.25mm以上なら耐久性が高く長く使える

刃数、形状、そして草刈機の排気量。ここまでくれば、チップソー選びも最終段階です。最後に見落としがちですが、実は非常に重要なのが、刃の「厚み」です。これは、チップソーの耐久性、そしてあなたの安全に直結する要素です。

私が20代半ばで、少しだけ仕事に慣れて調子に乗り始めていた頃、大きな失敗をしでかしたことがあります。それは、経費を少しでも節約しようという、今思えば浅はかな考えからでした。いつもの取引先ではなく、ふと立ち寄った金物屋の特売コーナーで、通常品の半額近い値段で売られていた竹用チップソーを見つけたのです。「これは儲けものだ」と喜び勇んで購入し、早速翌日の現場で使ってみました。

しかし、そのチップソーは、台金が1.0mmという非常に薄いものでした。最初のうちは問題なく切れていたのですが、作業開始から数時間が経ち、集中力が少し途切れてきた頃でした。硬い竹の節の部分に、少し無理な角度で刃を当ててしまった瞬間、「パキィン!」という甲高い、嫌な音が響き渡ったのです。手元に伝わる強烈な振動。慌ててエンジンを止め、刃を確認すると、台金が見るも無残に歪んでしまっていました。歪んだ刃は高速回転すると異常な振動を発生させ、まともに機械を保持することすらできません。腕は痺れ、作業の続行は不可能。結局、その日は仕事を中断し、いつもの信頼できるメーカーの1.25mm厚の刃を、正規の値段で買いに走る羽目になりました。「安物買いの銭失い」とは、まさにこのことだと、心の底から痛感した出来事です。

チップソーの刃の厚みは、その剛性、つまり変形しにくさと直結します。

  • 1.0mm~1.1mm厚:軽量で安価な製品に多く見られます。柔らかい草を刈る分には問題ありませんが、竹のような硬い対象物に使うと、少しの衝撃で歪んだり、最悪の場合、割れたりする危険性があります。
  • 1.25mm厚以上:多くのプロが標準として使用する厚みです。重量はわずかに増しますが、その分、台金の剛性が格段に高まります。硬い竹や節、予期せぬ障害物に当たった際にも歪みにくく、結果的に長く、そして何より安全に使い続けることができるのです。

ここで、こんな質問が聞こえてきそうです。

刃が厚いと、その分抵抗が増えて、切れ味が悪くなるのではないですか?

非常に良い質問です。確かに、物理的な抵抗はごくわずかに増えるかもしれません。しかし、竹を切るという作業においては、それ以上に「刃がブレない安定性」の方が、最終的な切れ味への貢献度は遥かに高いのです。想像してみてください。高速で回転するペラペラに薄い刃は、遠心力でわずかに「しなり」ながら対象物に当たります。これでは、力が逃げてしまい、竹の硬い繊維を断ち切ることができません。一方、厚みのある剛性の高い刃は、「ビシッ」と一直線に回転し、持てるパワーの全てを刃先に集中させることができます。安心して刃を竹に当てられるという精神的な余裕も、結果的に作業効率を大きく向上させるのです。

数百円の価格差を惜しんで、作業の効率を落とし、危険に身を晒すことほど馬鹿げたことはありません。竹を切るというハードな作業に挑むのであれば、迷わず1.25mm以上の厚みを持つ、信頼性の高いチップソーを選んでください。それが、あなたの身を守り、長い目で見てあなたの財布をも守ることにつながるのです。

⑤ フッ素コーティングの有無でメンテナンスの手間が激減

さて、性能に関わる最後のピースとして、チップソーの表面に施されている「コーティング」の有無についてお話ししましょう。これは切れ味そのものに直接影響するわけではありませんが、作業後のメンテナンスの手間、ひいてはチップソーの寿命を大きく左右する、見過ごせないポイントです。
竹を切ると、刃には非常に厄介な「ヤニ」が付着します。これは竹の樹液が熱で固まったもので、粘着性が高く、放っておくとセメントのようにカチカチに硬化してしまいます。このヤニがチップの刃先にこびりつくと、せっかくの鋭い切れ味が著しく低下してしまう。私がこの仕事を始めたばかりの頃は、まだコーティングされた刃など一般的ではありませんでしたから、作業が終わるたびに、パーツクリーナーを吹き付け、ワイヤーブラシでゴシゴシとヤニをこすり落とすのが日課でした。特に冬場の夕暮れ時、かじかむ手で冷たい金属の刃を掃除する作業は、正直なところ本当に億劫で、何度も「もう明日にしようか…」という悪魔の囁きと戦ったものです。
しかし、技術の進歩は素晴らしい。現在、多くの竹用チップソーには、フッ素コーティングやブラックコーティングといった、特殊な表面処理が施されています。これは、フライパンのテフロン加工をイメージしてもらうと分かりやすいかもしれません。表面が非常に滑らかで非粘着性になるため、ヤニや切り屑が付着しにくく、たとえ付着したとしても、布でサッと拭き取るだけで簡単に落とすことができるのです。
先日、静岡の現場で一日中竹を切った後の、二枚の刃の比較写真を撮りましたので、その様子を文章で描写してみましょう。
「現場写真の引用(テキスト化):2023年11月、静岡県伊豆市の竹林整備にて。左に置かれているのはコーティングが施されていない従来型のチップソー。刃の表面、特にチップの根本あたりに、茶色いヤニがベットリと厚い層をなしてこびりついています。一方、右に置かれたフッ素コーティングの刃は、ところどころにヤニが付着しているものの、そのほとんどは表面に乗っているだけ。ウエスで一拭きすると、下から新品同様の黒い輝きが現れました。この差は、誰の目にも歴然でしょう?」
もちろん、このコーティングも万能ではなく、石に当てたり、長期間使用したりするうちに少しずつ剥がれてはきます。それでも、あの面倒なヤニ取り作業から解放されるメリットは計り知れません。初期投資はコーティング無しのものに比べて数百円高くなるかもしれませんが、作業後の手間とストレスが激減することを考えれば、十分すぎるほどのお釣りが来る選択だと、私は断言できます。せっかく手に入れた良い刃を、常に最高のコンディションで使い続けるためにも、ぜひコーティングの有無をチェックしてみてください。

安全に草刈り機で竹を切る!実践的な切り方と3つの注意点

さて、ここまでで、あなたの草刈機に最適な、最高の竹用チップソーを選ぶ知識は十分に身についたはずです。しかし、本当の戦いはここから始まります。どんなに優れた道具も、それはあくまで使い手の手足の延長に過ぎません。その真価を100%引き出すためには、使い手の技術と安全に対する深い知識が伴わなくてはならないのです。ここからは、私がこれまで数えきれないほどの修羅場をくぐり抜けて体得した、安全かつ効率的な竹の切り方、その神髄についてお話ししていきましょう。これは、命を守るための技術です。心して聞いてください。

草刈り機

竹を切る

キックバック

粉砕

レシプロソー

  • 注意点1:キックバックを防ぐ!竹に対して刃を当てる角度
  • 注意点2:服装と保護具!ヘルメット・防護メガネは必須
  • 注意点3:切った竹の処理方法!粉砕するか集めて処分するか
  • それでも切れない太い竹には刈払機よりレシプロソーが有効な場合も
  • 草刈り機で竹を切る方法やチップソーの選び方まとめ

注意点1:キックバックを防ぐ!竹に対して刃を当てる角度

草刈機、特にチップソーを使った作業で最も恐ろしく、そして絶対に避けなければならないのが「キックバック」という現象です。これは、高速回転する刃が硬い障害物に弾かれることで、機体そのものが作業者の方向に、予期せず、そして暴力的に跳ね返ってくる現象を指します。このキックバックを制する者こそが、竹切りを制すると言っても過言ではありません。

あれは忘れもしない、2005年の7月、うだるような暑さの猛暑日でした。兵庫県の山奥で、急斜面に広がる竹林の整備を請け負っていた時のことです。納期が迫り、私の心には焦りがありました。足場の悪い斜面で、少し無理な体勢のまま、直径10cmはあろうかという太い孟宗竹に挑んでしまったのです。そして、やってはいけない致命的なミスを犯しました。刃の右上部分、つまり最もキックバックが起きやすい「危険ゾーン」で、竹を捉えてしまったのです。

その瞬間、「ガツンッ!」という金属的な衝撃と共に、それまで制御下にあったはずの刈払機が、凄まじい力で私の右方向へと跳ね上げられました。唸りを上げる刃が、私の顔のすぐ横を、ブンッという風切り音を残して通り過ぎていく。ヘルメットのフェイスガードに、砕け散った竹の破片がバチバチと激しく当たる音。一瞬、何が起きたのか全く理解できませんでした。全身の血の気がサッと引き、心臓が氷水に浸されたように冷たくなっていくのを感じながら、しばらくその場で呆然と立ち尽くすことしかできなかったのです。もし、あの時ヘルメットを被っていなかったら…。もし、もう少し体勢が崩れていたら…。今こうして、あなたにこの話をしている私は、いなかったかもしれません。

この恐怖の経験から、あなたに伝えたいキックバックを防ぐための鉄則は、たった二つです。

まず、チップソーの刃は、上から見て時計回りに回転しています。この回転する円盤を、時計の文字盤に例えてみてください。最も危険なのが、12時から3時の方向にあたる右上部分です。この部分で硬い竹などに触れると、回転の力が反発力に変わり、機体を右側、つまり作業者の方へと激しく押し戻そうとする力が働きます。これがキックバックの正体です。

ですから、竹を切る際に使うべきは、必ず刃の左側、時計で言うと8時から11時の方向です。この部分を意識して竹に当てるようにしてください。なぜなら、この部分で刃が弾かれたとしても、機体は作業者から離れる前方左側へと動こうとするため、比較的安全に対処することができるからです。

そしてもう一つは、刃を当てる前の準備です。竹に当てる前に、必ずスロットルレバーをしっかりと握り、刃の回転を最大まで上げて安定させてください。回転が不十分なまま中途半端に刃を当てると、刃が竹の繊維にガッチリと食い込んでしまい、身動きが取れなくなった結果、キックバックを引き起こす原因となります。十分な助走をつけてから、満を持して刃を当てる。この意識が重要です。

太い竹を切る場合は、決して焦って一度で切ろうとしないこと。右から左へ、刃をゆっくりとスライドさせながら、表面を数ミリずつ削り取るようなイメージで、少しずつ切り込みを入れていきます。竹と対話するように、その硬さや粘りを感じながら作業を進めるのです。あなたの右腕と一体化した草刈機が、まるで生き物のように感じられるようになれば、もうキックバックを恐れる必要はありません。

注意点2:服装と保護具!ヘルメット・防護メガネは必須

草刈り作業を安全に行うに当たり、オプションではなく絶対に揃えなければならないのが、防護服とフェイスガードです。

草刈り作業は大変な危険を伴う為、目立つ格好で!切れにくい!そして、飛び石があったときにフルフェイスで保護できるフェイスガードが必要です。

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「安全対策なんて、当たり前のことだろう」そう思った方もいるかもしれません。しかし、その「当たり前」を軽んじたために、取り返しのつかない事態に陥った仲間を、私は何人も見てきました。特に、竹を切る作業は、通常の草刈りとは比較にならないほど危険が伴います。竹の破片は槍のように鋭く、予想もしない速度と角度で飛んでくるのです。

以前、同じ現場で働いていた同僚の田中さん(仮名)が、夏場のうだるような暑さに耐えかねて、ほんの少しの時間だけと、フェイスガードを上げて防護メガネもせずに作業をしていたことがありました。その時、彼が切っていたのは、しなやかで細い笹竹でした。切断された笹竹の先端が、まるで鞭のようにしなって彼の顔面を直撃。裂けた竹の先端が、彼の右目のすぐ下を掠めていったのです。幸い、失明という最悪の事態は免れましたが、目の下に生々しい傷跡が残りました。病院で医師に「あと数ミリずれていたら、眼球が破裂していた」と告げられた彼は、真っ青な顔で「『これくらい大丈夫だろう』という、自分の過信が一番の敵でした」と、何度も繰り返していました。

皆さんが竹藪という戦場に向かう際に、絶対に欠かしてはならない装備は以下の通りです。これらは、あなたの体を守るための、いわば「鎧」です。

  • ヘルメット(フェイスガード付き):キックバックや飛来物から、最も重要な頭部と顔面を守る最後の砦です。これがなければ、作業を始める資格はありません。
  • 防護メガネまたはゴーグル:フェイスガードだけでは防ぎきれない、細かな木の屑や土埃から目を守ります。視界が確保できなければ、安全な作業は不可能です。
  • 安全靴(踏み抜き防止の鉄板入り):切った後の竹の切り株は、地面に仕掛けられた槍のようなものです。転倒した際などに、これを踏み抜いて大怪我をする事故が後を絶ちません。
  • 防振手袋:エンジンの振動は、長時間の作業で血行障害(白蝋病)を引き起こす原因となります。振動を軽減し、グリップ力を高めるためにも必須です。
  • 体にフィットした長袖・長ズボン:肌の露出は絶対に避けてください。竹の切り屑による切り傷を防ぐだけでなく、厄介な蜂やマダニといった害虫からも身を守ってくれます。

ここで、多くの方が抱くであろう疑問にお答えしておきましょう。

夏場は暑くて、そんなに重装備はできません。熱中症も心配です。

そのお気持ちは、汗だくで作業をする我々プロも痛いほどよく分かります。しかし、怪我のリスクと暑さを天秤にかけることは、決してできません。対策として、近年ではファンが付いた「空調服」を着用するのが一般的になっています。また、こまめに日陰で休憩を取り、スポーツドリンクなどで水分と塩分を計画的に補給することが何よりも重要です。作業時間も、比較的涼しい早朝や夕方に集中させ、日中の最も気温が高い時間帯は避けるなど、作業スケジュールを工夫することで、熱中症のリスクは大幅に軽減できます。安全は何物にも代えがたい、ということをどうか肝に銘じてください。

面倒だと感じるかもしれません。暑苦しいと思うかもしれません。それでも、あなたの体を守れるのは、あなた自身の安全意識だけなのです。

注意点3:切った竹の処理方法!粉砕するか集めて処分するか

竹をすべて切り終えた時、目の前に広がる景色に大きな達成感を覚えることでしょう。しかし、プロの仕事はそこで終わりではありません。切った竹をどのように処理するか、その「後始末」までを考えて初めて、一連の作業が完了したと言えるのです。切った竹をその場に放置すると、景観を損なうだけでなく、カミキリムシなどの害虫の発生源になったり、腐敗の過程で悪臭を放ったり、さらには残された節から再び新たな笹や竹が生えてくる原因にもなりかねません。

切った竹の処理方法は、大きく分けて二つの選択肢があります。

一つは、その場で「粉砕する」という方法です。
これには、竹や木をチップ状に細かく砕くための「ガーデンシュレッダー」や「チッパー」と呼ばれる専門の機械が必要になります。
この方法の最大のメリットは、切った竹の体積を劇的に減らすことができる点です。山のように積まれた竹も、粉砕すれば数分の一のかさになり、運搬の手間がほとんどかかりません。さらに、出来上がった竹チップは、畑の畝間に撒いて雑草の発生を抑制するマルチング材として使ったり、時間をかけて発酵させてカブトムシの幼虫が喜ぶ腐葉土にしたりと、資源として有効活用することも可能です。
しかし、もちろんデメリットもあります。何より、粉砕機そのものが高価であり、導入には相応のコストがかかります。また、エンジン式のものはかなりの騒音を発生させるため、住宅地に近い場所での使用には注意が必要です。

もう一つの選択肢は、従来通りの「集めて処分する」という方法です。
切った竹を運びやすいように3~4m程度の長さに切り揃え、一箇所に集積し、軽トラックなどで所定の場所まで運び出して処分します。
この方法のメリットは、特別な機械を必要としないため、誰でもすぐに取り組める点です。デメリットは、言うまでもなく、集積と運搬に多大な時間と労力がかかること。そして、処分場所の確保が意外と難しいという点です。自治体によっては、ゴミ処理場への持ち込みが有料であったり、そもそも受け入れてくれなかったりする場合もありますので、必ず事前にルールを確認しておく必要があります。

「昔は、切った竹を集めて燃やす『野焼き』で処理したものだけどね」と、大先輩がよく昔話をしてくれました。しかし、現在では廃棄物処理法や消防法により、一部の例外を除いて野焼きは厳しく規制されています。煙や臭いによる近隣トラブルの原因にもなりますので、安易に行うのは絶対にやめてください。

私が個人的に最近よく行うのは、敷地に余裕がある場合に限られますが、切り揃えた竹を敷地の隅に、昔ながらの「しの垣」のように綺麗に積み上げていく方法です。こうしておけば、見た目もそこまで悪くありませんし、数年という長い時間をかけて、ゆっくりと分解され、自然に土へと還っていきます。これもまた、自然と共存するための一つの知恵ではないでしょうか。切るところから、その最期まで見届ける。そこまで考えてこそ、本当の意味で「竹を制した」と言えるのだと、私は考えています。

それでも切れない太い竹には刈払機よりレシプロソーが有効な場合も

ここまで、草刈り機(刈払機)を駆使して竹を切る方法について、私の持てる知識と経験の全てをお話ししてきました。しかし、どんな道具にも限界というものは存在します。あなたの目の前に、直径が15cmを超えるような、もはや「丸太」と呼ぶべき風格の孟宗竹が立ちはだかった時。あるいは、家の壁や石垣のすぐそばに生えていて、刈払機を安全に振るスペースが全くない時。そんな状況では、無理に刈払機で挑むのは得策とは言えません。危険度が跳ね上がるだけでなく、機体にも過大な負荷がかかり、故障の原因にもなりかねないからです。

そんな時、私がそっと腰の道具袋から取り出すのが、「レシプロソー」という電動工具です。
「セーバーソー」という名前で呼ばれることもありますね。これは、細長いノコギリの刃が、モーターの力で前後に高速で往復運動することによって対象物を切断する道具です。
刈払機が、高速回転する刃の遠心力で対象物を「叩き切る」イメージだとすれば、レシプロソーは、ノコギリの往復運動で対象物を「引き切る・押し切る」イメージです。

刈払機と比べた際のレシプロソーの利点は、何と言ってもその安全性と正確性にあります。回転運動ではないため、キックバックの心配が原理的にありません。そのため、狭い場所や足場の悪い場所でも、狙った一点を安全かつ正確に切断することができるのです。

忘れられない仕事があります。由緒あるお寺の裏山で、苔むした古い石灯籠のすぐ脇から生えてしまった、巨大な竹を伐採する依頼でした。刈払機を使えば、万が一キックバックが起きた際に、歴史ある石灯籠を傷つけてしまう恐れがある。そこで私は、レシプロソーに竹挽き用の長いブレード(刃)を装着し、竹の根元にじっくりと刃を当てていきました。時間はかかりましたが、周囲の構造物を傷つけることなく、ミリ単位の精度で、安全に作業を終えることができました。作業を見守っていた住職から、「見事な仕事ぶりですね」と深く頭を下げられた時の安堵感と誇らしさは、今でも私の胸に残っています。

もちろん、レシプロソーにも弱点はあります。刈払機に比べて、切断スピードはどうしても遅くなります。広範囲の竹藪をスピーディーに処理するには向きません。あくまで、刈払機では対応が難しい、ピンポイントの強敵を相手にするための「切り札」という位置づけです。

全ての作業を一つの道具でこなそうとするのではなく、状況に応じて最適な道具を選択する。その「引き出しの多さ」こそが、プロフェッショナルとアマチュアを分ける、一つの大きな境界線なのかもしれません。あなたの道具箱にも、レシプロソーという新たな選択肢を加えてみてはいかがでしょうか。

草刈り機で竹を切る方法やチップソーの選び方まとめ

長い時間、私の現場話にお付き合いいただき、本当にありがとうございました。最後に、これまでの要点を振り返りながら、あなたのこれからの竹との戦いにエールを送らせていただきたいと思います。

まず、草刈り機で竹を切るための生命線、竹用チップソーの選び方。覚えていますか?
笹竹や細い竹には「40P」、本格的な竹藪には「60P以上」の刃数を選ぶこと。石などの障害物が多い荒れた場所では衝撃に強い「両刃」を、綺麗な現場で切れ味を重視するなら「チドリ刃」を。あなたの草刈機の能力を最大限に引き出すために、「26ccクラス以上の排気量」が望ましいこと。そして、長く安全に使うためには「1.25mm以上の刃厚」と、メンテナンスを楽にする「フッ素コーティング」が施されたものを選ぶのが賢明です。

そして、道具を手に入れた後に最も重要な、安全な切り方の技術。
刈払機が暴れる恐怖の現象「キックバック」を防ぐため、刃の左下(8時~11時)を使い、回転を最大にしてから当てること。ヘルメットや防護メガネといった保護具は、あなたの体を守る最後の鎧です。決して過信せず、常に身につけてください。切った竹の後始末まで考えてこそ、一流の仕事です。

道具の知識と安全の技術、この二つの車輪が揃って初めて、あなたは鬱蒼とした竹藪を「手に負えない脅威」から「管理し、活用できる資源」へと変えることができるのです。今日、あなたが手に入れたこの知識は、あなたの愛用する草刈り機を、間違いなく最強の竹刈り機へと進化させるでしょう。

さあ、明日からは竹に刃が弾かれる「ガツンッ」という不快な衝撃に怯える必要はもうありません。サク、サク、という小気味よい切断音と共に、あなたの目の前に、光の差す道が拓けていくはずです。これまで人の立ち入ることを拒んできた竹林に、木漏れ日が差し込む、あの美しい瞬間を想像してみてください。それは、他の誰でもない、あなた自身の力で切り拓いた未来の景色に他なりません。
どうぞ、安全に、そして心から楽しんで、竹との対話に臨んでください。あなたの健闘を、心から祈っています。