(更新日: 2025年12月4日)

愛猫がまたたびの匂いを嗅いだ瞬間、ゴロゴロと喉を鳴らして陶酔する姿を見たことはありますか?
そのあまりの変貌ぶりに、「またたびは人間でいうと危険な薬物のようなものではないか?」と不安を感じてしまう飼い主さんも少なくありません。
実は、またたびが猫に与える効果は、人間でいうと「強いお酒」を飲んだ時の酩酊状態や、極上のリラックス状態に近いと言われています。
マタタビラクトンなどの成分が含まれており、人間には感じにくいものの、猫にとっては脳を刺激する強烈な誘惑となるのです。
猫がまたたびを夢中で吸う、あるいは実や粉末を食べることで、一時的なストレス解消や食欲増進につながりますが、そこには無視できないリスクも潜んでいます。
適量を超えて与えすぎると、中枢神経への過度な刺激となり、最悪の場合は呼吸停止による死亡のリスクや、体に深刻な害を及ぼす可能性があるのです。
また、個体によっては重篤なアレルギー反応を引き起こし、命に関わる事態になるケースも報告されています。
一方で、またたびは決して「猫だけのもの」ではありません。
実は人間用としても古くから漢方や健康食品として活用されており、人間が食べることで滋養強壮や冷え性改善に役立つとされています。
本記事では、またたびの正しい知識と安全な与え方、そして意外と知られていない人間への効能までを徹底解説します。
愛猫の健康を守るために知っておくべきリスク管理と、またたびを上手に生活に取り入れて活用するヒントをぜひ持ち帰ってください。
記事の要約とポイント
- またたびは猫にとって人間でいうとお酒のような効果があり、ストレス解消に役立ちますが、薬物のような危険な側面も理解する必要があります。
- 過剰に吸う、または食べることは中枢神経に負担をかけ、最悪の場合は死亡リスクや深刻な害を招くため注意が必要です。
- マタタビラクトンという成分がどんな匂いかを知り、アレルギー反応などの危険なサインを見逃さないことが大切です。
- 実は人間用としても疲労回復などの効果が期待でき、人間が食べることも可能な古来からの健康食材であることを紹介します。
目次 ➖
またたびは人間でいうと強いお酒?猫への効果や死亡の危険性
結論から言うと、またたびは猫にとって、人間でいう「度数の高い極上のお酒」であり、同時に「虫除けスプレー」でもあります。
脳内の神経系に作用し、一時的な多幸感をもたらしますが、薬物のような依存性や離脱症状はありません。ただし、お酒と同様に「許容量」を超えて吸うことや食べることは、急性アルコール中毒のような危険な状態(中枢神経麻痺)を引き起こし、最悪の場合は死に至るリスクがあります。また、実は人間用としても古くから滋養強壮の漢方として利用されており、猫だけの植物ではありません。正しい距離感を保てば、猫のQOLを劇的に上げるツールになります。
「またたびは人間でいうと麻薬だ」
そんな噂を耳にして、愛猫に与えるのを躊躇している方も多いでしょう。確かに、あの泥酔したような姿を見ればそう思いたくなる気持ち、痛いほどわかります。
しかし、獣医学や科学の視点から見ると、その答えは「麻薬というよりは、テキーラのような強いお酒」というのが最も近いです。
なぜなら、麻薬には「依存性」と「耐性(効かなくなって量が増える)」、そして止めた時の「禁断症状」がありますが、またたびにはこれらが認められていないからです。
猫はまたたびを楽しんだ後、ケロっとして元の生活に戻りますよね。「昨日のまたたびが切れてイライラする!もっとくれ!」と暴れ出す猫はいません。この点が、決定的に薬物とは異なります。
一方で、脳への作用機序は非常に興味深いものがあります。
またたびの成分を感知すると、猫の脳内では「β-エンドルフィン」という神経伝達物質が分泌されます。これは、人間でいうとランナーズハイの状態や、美味しいものを食べた時、あるいは素晴らしい音楽を聴いて感動した時に出る物質と同じです。
つまり、またたびを嗅いでいる時の猫は、「大好きなサウナで整っている時」や「仕事終わりの一杯目のビールを飲んだ瞬間」のような、至福のリラックス状態にあると言えます。
ただし、その刺激が強すぎるため、人間でいうとお酒を一気飲みした時のように、運動機能に一時的な支障(ふらつきなど)が出てしまうのです。
猫への効果と死亡等の害
またたび
人間でいうと
効果
死亡
害
またたびは人間でいうと強いお酒に近く、猫に幸福感を与えます。しかし過剰に吸うことや食べることは中枢神経麻痺を引き起こし、最悪の場合は死亡につながる害があります。どんな匂いかを知りアレルギー反応にも注意しながら、適切な量を与えることが重要です。中毒症状を防ぐためにも正しい知識を身につけましょう。
- ストレス解消や食欲増進など猫に与える主な効果
- マタタビラクトンはどんな匂い?猫が激しく反応する理由
- 過剰に吸う・食べることで起こる中毒症状と死亡リスク
- 呼吸困難などのアレルギー反応と体に及ぼす害
ストレス解消や食欲増進など猫に与える主な効果
では、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。
「ただラリっているだけ」に見える行動にも、実は猫なりの合理的な理由や、飼い主が活用すべきポジティブな効果が隠されています。
まず最大の効果は、やはり「強力なストレス解消」です。
完全室内飼いの猫にとって、刺激の少ない毎日は退屈との戦いです。狩猟本能を満たせないフラストレーションは、問題行動(粗相や夜泣き)の原因にもなります。
そんな時、またたびは「非日常の刺激」を与えてくれるエンターテインメントになります。
私の実家の猫も、新しい家具を買った時や来客があった時など、明らかに緊張している様子を見せた後にまたたびを与えると、憑き物が落ちたようにリラックスして眠りにつくことがよくありました。人間でいうと、嫌なことがあった日にカラオケで熱唱してスッキリする感覚に近いのかもしれません。
次に「食欲増進」です。
夏バテや加齢で食が細くなった猫に対し、フードに少量のまたたび粉末を振りかけることで、魔法のように食いつきが良くなることがあります。
これは、またたびの匂いが猫の嗅覚を強烈に刺激し、覚醒させることで、「食べるぞ!」というスイッチを入れるためだと考えられています。
ただし、これはあくまで「きっかけ作り」であり、またたび自体に栄養があるわけではありません。人間でいうと、食前酒で胃を活性化させるアペリティフのような役割ですね。
そして意外な効果として、「老化防止・運動不足解消」も挙げられます。
老猫になると動くのが億劫になりがちですが、またたびへの反応が良い個体であれば、匂いを嗅ぐだけで若返ったように転げ回り、全身運動を始めます。
これは、脳への刺激が身体機能を呼び覚ますためです。寝たきりを防ぐためのリハビリとして活用している獣医師さんもいるほどです。
マタタビラクトンはどんな匂い?猫が激しく反応する理由
ここで一つ、素朴な疑問が湧きませんか?
「またたびって、人間にとってはどんな匂いなの?」と。
実際にまたたびの粉末や実の匂いを嗅いでみたことはありますか?
もしなければ、ぜひ一度嗅いでみてください。おそらく、多くの人が拍子抜けするはずです。
人間にとってまたたびの匂いは、「少し酸っぱいような、埃っぽいような、微かな草の香り」程度にしか感じられません。決して、芳醇なワインや焼きたてのパンのような、食欲をそそる香りではないのです。
ではなぜ、猫だけがあれほど狂喜乱舞するのでしょうか。
その鍵を握るのが、「マタタビラクトン」や「ネペタラクトール」といった揮発性の化学成分です。
これらは、猫の上顎にある「ヤコブソン器官(鋤鼻器)」という特殊な嗅覚器官を通して感知されます。この器官は、フェロモンなどを感知するための特別なセンサーです。
つまり、猫はまたたびを「鼻で匂いを嗅いでいる」というよりは、「脳に直結するセンサーでフェロモンレベルの信号を受け取っている」という表現が正しいでしょう。
さらに最近の研究で、驚くべき事実が判明しました。
岩手大学の研究グループなどの発表によると、猫がまたたびに体を擦り付ける行動には、「蚊を避ける」という実利的な目的があることが分かったのです。
またたびに含まれるネペタラクトールという成分には、蚊を忌避する効果があります。野生の本能として、茂みに入って狩りをする際に、またたびの成分を体に塗りたくることで、感染症を媒介する蚊から身を守っていたのです。
人間でいうと、「虫除けスプレーを全身に浴びている」状態だったわけですね。
あの恍惚の表情は、「これで蚊に刺されなくて済むぞ~!最高!」という喜びも混じっているのかもしれません(もちろん、脳への直接的な快楽作用もありますが)。
参考:岩手大学の研究発表
過剰に吸う・食べることで起こる中毒症状と死亡リスク
さて、ここからが本記事の最も重要な警告部分です。
「またたびは安全な植物だ」と高を括っていると、取り返しのつかない事故につながる可能性があります。
特に注意すべきは、「過剰摂取」です。
またたびに対する反応には個体差がありますが、感受性が高い猫の場合、適量を超えて吸う、あるいは実を丸ごと食べることで、中枢神経が過剰に刺激され、「またたび中毒」とも呼べる状態に陥ることがあります。
人間でいうと、これは「急性アルコール中毒」に非常に近いです。
脳の抑制が効かなくなり、呼吸中枢や運動中枢に麻痺が生じるのです。
以下に、危険な症状のレベルをまとめました。愛猫に与えている時、このようなサインが出ていないか必ず確認してください。
| 危険度 | 症状の特徴 | 人間でいうと… | 対応 |
| レベル1(正常範囲) | ゴロゴロ喉を鳴らす、体をくねらせる、よだれが出る、一時的に活発になる。 | ほろ酔いで上機嫌になっている状態。 | そのまま見守る(10〜20分で収まる)。 |
| レベル2(要注意) | 足元がふらつく、立ち上がれない、攻撃的になる、興奮が30分以上続く。 | 泥酔して千鳥足、または酒乱で暴れている状態。 | 直ちに取り上げ、静かな場所で休ませる。 |
| レベル3(危険・緊急) | 呼吸困難(開口呼吸)、泡を吹くほどの大量のよだれ、痙攣、意識消失。 | 急性アルコール中毒で救急搬送レベル。 | 即座に動物病院へ!死亡リスクあり。 |
特に危険なのが、「またたびの実」をそのまま与えることです。
粉末や液体スプレーは成分が揮発しやすいため、効果も一時的ですが、実を食べてしまうと消化管から成分が吸収され続け、効果が長時間持続してしまいます。
これが呼吸不全を引き起こし、最悪の場合は死亡に至るケースも理論上あり得ますし、実際に重篤な状態になって動物病院に担ぎ込まれた例は少なくありません。
「猫が喜ぶから」といって、またたびの枝や実を与えっぱなしにして外出する行為は、「ウイスキーのボトルを開けて、子供の部屋に置いていく」のと同じくらい無責任で危険な行為だと認識してください。
呼吸困難などのアレルギー反応と体に及ぼす害
中毒以外にも、忘れてはいけないのが「アレルギー」です。
またたびも植物ですから、花粉症や食物アレルギーと同様に、特定の猫にはアレルゲンとなって体に害を及ぼす可能性があります。
アレルギー反応が出た場合、皮膚の痒みや発疹だけでなく、気管支が収縮して呼吸困難に陥ることがあります。
特に注意が必要なのが、「心臓疾患」や「てんかん持ち」の猫です。
またたびによる興奮作用は、心拍数を急激に上昇させます。人間でいうと、心臓が悪い人に「ジェットコースターに乗れ」と強要するようなものです。心臓に負担がかかりすぎると、アレルギーとは別に心不全のリスクも高まります。
「うちの子は今まで大丈夫だったから」という油断も禁物です。
人間がある日突然花粉症になるように、猫も体調の変化によって突然またたびを受け付けなくなることがあります。
久しぶりに与える際は、必ず爪楊枝の先程度の極微量から試し、呼吸状態や皮膚の様子(赤くなっていないか)を観察する癖をつけましょう。
【知恵袋風 Q&Aセクション:飼い主のリアルな悩み】
ここで、実際に私の元に寄せられた相談や、ネット上のQ&Aサイトで見かける切実な悩みについて、綺麗事抜きで回答していきましょう。
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YouTuberが猫に大量のまたたびを与えて泥酔させている動画を見て、正直不快です。あれって虐待じゃないんですか?
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お気持ち、痛いほどわかります。動画の再生数を稼ぐために、猫の健康を度外視して過剰な演出をする…残念ながら、そういった側面があることは否定できません。人間でいうと、飲み会で無理やりお酒を飲ませて潰れる様子を撮影し、「面白い!」と笑っているのと同じ構図に見えますよね。ただ、法的な「虐待」の定義に当てはまるかは微妙なラインです。しかし、倫理的には完全にアウトだと私は思います。ああいった動画を真似して、知識のない飼い主が愛猫に大量投与し、事故を起こすのが一番怖いです。
私たちは「反面教師」として、あの動画の猫たちがその後どうなったか(ひどい二日酔いのような状態だったはずです)を想像し、自分の猫はしっかり守ってあげましょう。
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またたびをあげたら、猫が凶暴化して本気で噛まれました。もう二度とあげない方がいい?
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はい、その子には「合わない」可能性が高いです。人間にも「酒乱」の人がいますよね?普段は温厚なのに、お酒が入ると暴れ出す人。猫にも全く同じタイプがいます。またたびによる興奮が攻撃性に転化してしまうタイプです。これはしつけで治るものではなく、脳の反応の仕方による個体差です。飼い主さんが怪我をするだけでなく、同居猫がいる場合は喧嘩に発展して大惨事になります。その子にとってまたたびは「リラックス」ではなく「闘争本能のスイッチ」になってしまっているので、残念ですが今後は与えないのが正解です。代わりに、おやつやおもちゃでストレス発散させてあげてください。
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うちの猫、またたびに全く反応しません。人間でいうと不感症?
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いえいえ、それは「下戸(げこ)」なだけです!実は、猫の約20%〜30%はまたたびに反応しないと言われています。特に子猫や老猫、そしてメス猫よりもオス猫の方が反応しやすい傾向があるなど、差があります。人間でも、全くお酒が飲めない体質の人がいますよね。それと同じで、遺伝的に反応するレセプターを持っていないだけなので、病気でも何でもありません。「安上がりでいい子だね~」と笑ってあげればOKです。無理に反応させようとして大量に与えるのは絶対にやめてくださいね。
またたびは人間でいうと漢方薬?人間用の活用法と正しい与え方
さて、ここまでは「猫にとってのまたたび」の話をしてきましたが、視点をガラリと変えてみましょう。
「またたびは、人間にとっても有効なものなのか?」
驚くことに、答えはYESです。
古来より、またたびは人間にとっても「漢方薬」や「健康食品」として親しまれてきました。
実は、またたびという名前の由来自体が、人間への効果を示しているという説をご存知でしょうか?
人間用の効能と活用法
人間
食べる
人間用
またたび
効果
またたびは猫だけでなく人間用の漢方や健康茶としても利用されています。人間が食べることで疲労回復や冷え性改善などの効果が期待できます。猫に与える際は週に1回程度に留め、人間と猫それぞれの安全な楽しみ方を理解することが大切です。滋養強壮に役立つまたたび酒など、生活に取り入れる方法を解説します。
- 実は人間も食べる?疲労回復や滋養強壮への効能
- またたび酒やまたたび茶など人間用の製品と利用法
- 1週間に1回程度が目安!猫に与える際の注意点
- またたびは人間でいうと嗜好品!猫との付き合い方まとめ
実は人間も食べる?疲労回復や滋養強壮への効能
有名な語源説として、かつて旅人が長旅で疲れ果てた時に、またたびの実を食べたところ、再び旅を続ける元気が湧いてきたことから「また旅(またたび)」と名付けられた、という話があります。(※諸説あり、アイヌ語由来説もあります)
この逸話が示す通り、またたびは人間に対して「疲労回復」や「滋養強壮」の効果が期待されています。
猫のように酩酊してラリるわけではありませんが、人間が食べると体がポカポカと温まり、代謝が良くなる感覚を得られます。
人間でいうと、まさに「栄養ドリンク」や「高麗人参」のような立ち位置です。
東北地方や山間部では、昔からまたたびの若芽をおひたしにして食べたり、実を塩漬けにして酒のつまみにする文化が残っています。
味は……正直に言うと、かなり独特です。生の実は非常に辛く(舌がピリピリするほど)、アクも強いため、そのまま美味しく食べるフルーツとは程遠いです。
しかし、この辛味成分こそが薬効の元であり、冷え性改善や神経痛の緩和に役立つと信じられてきました。
またたび酒やまたたび茶など人間用の製品と利用法
では、現代の私たちが人間用としてまたたびを取り入れるには、どうすれば良いのでしょうか。
最もポピュラーなのが「またたび酒」です。
梅酒と同じ要領で、またたびの実(特に虫こぶ状になった『虫えい果』が薬効が高いとされる)をホワイトリカーと氷砂糖で漬け込みます。
半年から一年ほど熟成させると、琥珀色の美しい薬酒が完成します。
これを寝る前に少量(おちょこ一杯程度)飲むことで、冷え性の改善や安眠効果、そして疲れた体のリカバリーが期待できます。
また、アルコールが苦手な方には「またたび茶」もあります。
乾燥させた葉や実を煎じて飲むのですが、こちらは血行促進や利尿作用があるとされています。
人間用のまたたび製品を利用する際のメリットを表にまとめました。
| 製品・利用法 | 主な効果(人間用) | 特徴・味 | おすすめの人 |
| またたび酒 | 滋養強壮、冷え性改善、食欲増進 | 独特の辛味と香りが溶け込み、薬草酒のような風味。 | 疲れが取れない人、手足が冷える人。 |
| またたび茶 | 利尿作用、リラックス、血行促進 | 苦味と辛味がある大人の味。ハチミツを入れると飲みやすい。 | お酒が飲めない人、健康志向の人。 |
| またたび入浴剤 | 保温効果、神経痛・リウマチの緩和 | 体の芯から温まる。猫が風呂場に突撃してくるリスクあり(笑)。 | 腰痛持ちの人、湯冷めしやすい人。 |
ここで一つ笑い話のような注意点ですが、人間用に作ったまたたび酒や入浴剤を使っていると、愛猫が匂いを嗅ぎつけて大興奮してしまうことがあります。
「お父さんの晩酌のグラスに猫が顔を突っ込んだ!」なんて事故が起きないよう、管理場所には厳重な注意が必要です。人間にとっては薬酒でも、猫にとってはやはり「最強の誘惑」なのですから。
1週間に1回程度が目安!猫に与える際の注意点
話を猫に戻しましょう。
人間用の効能を知った上で、改めて「猫への正しい与え方」を整理します。
キーワードは「適度な距離感」です。
またたびは、毎日与えるものではありません。
人間でいうと、毎日高級ステーキを食べていたら胃もたれしますし、感動も薄れますよね?
それと同じで、頻繁に与えすぎると猫も「耐性」のようなものができ、反応が鈍くなることがあります。また、前述した体への負担も考慮しなければなりません。
獣医師や専門家が推奨する頻度の目安は、「1週間に1回程度」、多くても2回までです。
量は、粉末なら「耳かき一杯分」、爪とぎに振りかける程度で十分です。
「もっともっと」と猫がねだってくるかもしれませんが、そこは飼い主が心を鬼にして管理する必要があります。
与えるタイミングとしては、以下のようなシーンが最適です。
- 爪とぎのしつけ: 新しい爪とぎを使ってほしい時。
- ストレス発散: 来客後や病院から帰ってきた後のご褒美。
- 食欲がない時: フードのトッピングとして。
- コミュニケーション: 一緒に遊ぶ時間のスパイスとして。
特に、子猫(生後半年未満)には与えないのが無難です。
神経系が発達段階にあるため、刺激が強すぎる可能性があります。人間でいうと、子供にコーヒーや栄養ドリンクを飲ませないのと同じ配慮です。
またたびは人間でいうと嗜好品!猫との付き合い方まとめ
ここまで、またたびの光と影について詳しく解説してきました。
最後に、この記事の総括として、改めて「またたびとは何か」を定義し、明日からの愛猫との向き合い方を提案したいと思います。
またたびは、猫にとって「人間でいうお酒や嗜好品」であり、使い方次第で薬にも毒にもなるツールです。
決して「恐ろしい麻薬」ではありませんが、無制限に与えて良い「ただのおやつ」でもありません。
飼い主であるあなたが持つべきなのは、「バーテンダーのような冷静な目線」です。
お客様(愛猫)の体調を見極め、最高のタイミングで、適量を提供する。
そうすれば、またたびは愛猫のストレスを吹き飛ばし、とろけるような至福の時間を提供してくれる魔法のアイテムになります。
想像してみてください。
週末の夜、あなたがビールやワインで一週間の疲れを癒やす横で、愛猫もまたたび入りのぬいぐるみでゴロゴロと至福の表情を浮かべている。
種族は違えど、同じ空間で「あ~、生きててよかった~」という快楽を共有できる。
これって、すごく素敵なことだと思いませんか?
「またたび=怖いもの」という偏見を捨て、正しい知識という武器を持って、ぜひ愛猫との晩酌ならぬ「またたびタイム」を楽しんでください。
その時の愛猫の、少し半目で舌が出ているマヌケで愛おしい顔は、きっとあなたの日頃の疲れも(またたび以上に)癒やしてくれるはずですから。




