(更新日: 2025年11月24日)

家の周りの雑草が伸び放題になり、日々の草むしりに疲弊している方にとって、一度敷けば長期間効果が続く防草シートは非常に魅力的な解決策です。
しかし、導入を検討する中で「防草シートを敷くとシロアリが発生するというのは本当だろうか」という疑問や、「虫がわく温床になってしまい、結局後悔することになるのではないか」という深い不安を抱いている方も少なくありません。
実際に、何も対策をせずに安易にシートを設置してしまうと、防草シートの下が適度な湿気を保った暗所となり、ゴキブリやダンゴムシ、さらには防草シートの下にムカデなどの不快な害虫にとって絶好の隠れ家となってしまうデメリットがあります。
特に木造住宅にとって大敵であるシロアリが、シートを伝って家屋に侵入するリスクは、決して無視できない重大な問題です。
このような事態を避けるためには、シートを敷く前の土壌処理や、殺虫剤を適切に組み合わせた予防策を講じることが何よりも重要になります。
あるいは、日当たりや水はけの条件によっては「防草シートはいらない」と割り切り、防草シートなしで砂利を厚く敷くなどの別の手段を選択する方が、長期的な管理コストや精神的な安心感において優れている場合もあります。
この記事では、防草シートの導入で失敗しないために知っておくべき虫対策の全知識と、それぞれの環境に適した選び方をプロの視点で詳しく解説していきます。
あなたの大切な家をシロアリ被害から守り、快適な庭環境を実現するためのヒントを網羅しましたので、ぜひ最後までご覧ください。
記事の要約とポイント
- 防草シートの下は湿気がこもりやすく、シロアリやゴキブリなどの虫がわく原因になり得るため、デメリットを理解した上での施工が不可欠です。
- 家の周りに安易に敷くと、防草シートの下にムカデが巣を作るなどして後悔することになるため、事前の土壌処理や殺虫剤による対策が重要です。
- メンテナンスが困難な場所や湿気が多い場所では、あえて防草シートはいらないと判断し、防草シートなしで砂利を敷く方法も有効な選択肢となります。
- 正しい知識を持って防草シートを選び、定期的な点検を行うことで、虫の被害を最小限に抑えつつ快適な住環境を守ることができます。
目次 ➖
防草シートでシロアリ被害?虫がわくデメリットを知らずに後悔しないために
「雑草が生えなくなる魔法のシート」
ホームセンターの園芸コーナーに行けば、そんな謳い文句と共に様々な種類の防草シートが並んでいます。確かに、日光を遮断し、植物の光合成を阻害することで雑草を抑える効果は絶大です。しかし、物事には必ず裏と表があります。
私が現場で何度も目にしてきたのは、安易に防草シートを敷いた結果、家の周りの環境バランスを崩し、予期せぬトラブルを招いてしまった事例です。特に深刻なのが、シロアリをはじめとする虫がわくというデメリットです。
なぜ、雑草を防ぐはずのシートが、害虫を呼び寄せてしまうのでしょうか?
それは「隠れ家」としての性能があまりにも高すぎるからです。
自然界において、外敵から身を守り、適度な湿度と温度が保たれた場所は、虫たちにとっての楽園です。私たちが良かれと思って敷いたシートは、皮肉にも彼らにとって最高級のシェルターを提供していることになるのです。
例えば、2005年に私が担当した関東地方のあるお宅での話です。
「最近、羽アリをよく見かける」という相談を受け、庭の調査を行いました。家の基礎周辺にDIYで施工された防草シートがあり、それを少し剥がしてみると、そこにはシロアリの通り道である「蟻道(ぎどう)」が基礎コンクリートに向かって伸びていました。
施主様は「雑草対策をしたつもりが、まさかシロアリを招き入れていたなんて」と肩を落とされていました。後悔しても、食われた柱は元には戻りません。
このように、防草シートの設置には、単に草を抑えるだけでなく、土壌環境の変化や生態系への影響まで考慮に入れた、プロの視点が必要不可欠なのです。
防草シートの虫被害とデメリット
防草シート
シロアリ
虫
後悔
デメリット
防草シートの下は湿度が高く保たれるため、ゴキブリやシロアリなどの虫にとって好都合な環境になりがちです。家の周りに安易に設置すると、防草シートの下にムカデが住み着くなどして後悔する原因となります。虫がわくリスクというデメリットを正しく理解し、設置場所を慎重に見極めることが大切です。
- 防草シートの下はゴキブリやシロアリが好む暗所・多湿環境
- 家の周りに使用して大丈夫?防草シートの下にムカデが集まるリスク
防草シートの下はゴキブリやシロアリが好む暗所・多湿環境
想像してみてください。
真夏の炎天下、地面は乾燥していても、石をひっくり返すとその下は湿っていますよね?防草シートの下でも、これと同じ現象が、より広範囲で起きています。
特に、透水性の悪い安価なビニール製のシートや、水はけの悪い粘土質の土壌の上にシートを敷いた場合、その下は常に蒸れた状態になります。
ここに、「暗所」「多湿」「外敵がいない」という条件が揃います。
この環境をこよなく愛するのが、ゴキブリやシロアリです。
彼らは乾燥を嫌います。特にシロアリ(ヤマトシロアリなど)は、皮膚が薄く乾燥に弱いため、湿った土の中や木材の中を移動します。防草シートの下は、彼らにとって乾燥のリスクなく移動できる「高速道路」のようなものです。
さらに悪いことに、シートがあることで、私たちは地面の異変に気付きにくくなります。
「シートがあるから安心」という油断が、発見を遅らせるのです。
ここで、簡単なチェックリストを作成しました。ご自宅の庭が以下の条件に当てはまる場合、注意が必要です。
| チェック項目 | リスクレベル | 理由 |
| 日当たりが悪く、常にジメジメしている | 高 | 湿気が逃げず、カビや菌類も繁殖しやすい |
| 家の基礎(コンクリート)ギリギリまでシートを敷いている | 危険 | シロアリが基礎へ侵入する経路を隠してしまう |
| シートの上に落ち葉や土が堆積している | 中 | 堆積物が腐葉土化し、虫の餌場となる |
| 以前、その場所に腐った切り株や木材があった | 危険 | 既にシロアリのコロニーが存在する可能性が高い |
シロアリの生態については、専門機関の情報も参考にすべきでしょう。例えば、公益社団法人 日本しろあり対策協会のウェブサイトでは、シロアリの生態や被害事例について詳しく解説されていますので、一度目を通しておくことをお勧めします。
https://www.hakutaikyo.or.jp/
このように、防草シートの下は、単なる地面ではなく、独自の生態系を持った「閉鎖空間」になり得るという事実を、まずは認識してください。
家の周りに使用して大丈夫?防草シートの下にムカデが集まるリスク
「夜、リビングでくつろいでいたら、突然天井からムカデが落ちてきた」
こんな話を聞くだけで背筋が凍る思いですが、実はこれも防草シートと無関係ではありません。
防草シートの下にムカデが潜むケースは、非常に多いのです。
ムカデは肉食性で、ゴキブリやクモ、その他の昆虫を捕食します。先ほど述べたように、防草シートの下が湿気を帯び、小さな虫たちの楽園になっていれば、それを餌とするムカデも当然集まってきます。食物連鎖が、シートの下で完成してしまうわけです。
特に家の周り、いわゆる「犬走り」と呼ばれる部分に防草シートを施工する場合は細心の注意が必要です。
ムカデはわずかな隙間から屋内に侵入します。基礎の換気口、エアコンのドレンホースの隙間、サッシのレールの水抜き穴。家の周囲にムカデの生息密度が高まれば、それだけ家の中への侵入リスクも跳ね上がります。
私が現場でよく行う対策として、家の基礎から50cm程度は防草シートを敷かず、代わりに「コンクリート」や「固まる土」で舗装するか、あるいは何も置かずに乾燥させておく、という方法があります。これを「ドライゾーン」を作ると呼びます。
ムカデやシロアリは乾燥した開けた場所を嫌うため、建物の周りにバリアゾーンを設けることで、侵入確率をぐっと下げることができるのです。
もし、どうしても家の際までシートを敷きたい場合は、定期的にシートの端をめくって点検するか、後述する薬剤散布を併用することが必須となります。
「たかが虫」と侮ってはいけません。ムカデの咬害(こうがい)は強烈な痛みを伴い、アナフィラキシーショックを引き起こす可能性さえあるのですから。
ここで、読者の皆様からよく頂く質問にお答えしましょう。
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防草シートの色によって虫の集まりやすさは変わりますか?
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実のところ、色による大きな違いはありません。黒色は光を遮断する力が強い反面、熱を持ちやすいですが、シートの下の温度が上がりすぎると虫が逃げることもあります。しかし、夜間や涼しい季節には戻ってきます。重要なのは色よりも「透水性」と「下の土壌環境」です。
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ザバーンなどの高級シートなら虫はわきませんか?
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高品質なシートは繊維が緻密で、虫が突き破って出てくることは少ないですが、シートの「下」に虫が住み着くこと自体は防げません。シートの性能と、その下の環境作りは別問題として考える必要があります。
防草シートのシロアリ予防と駆除対策!殺虫剤や砂利敷きの活用術
では、具体的にどのような対策を講じれば良いのでしょうか。
私が長年の経験から導き出した答えは、「物理的防御」と「化学的防御」のハイブリッドです。
まず、物理的防御として有効なのが「防草シートなしで砂利」という選択肢も含めた、砂利の活用です。
ただし、パラパラと薄く撒くだけでは意味がありません。
私は常に「厚さ5cm以上」の砂利敷きを推奨しています。
計算式で示すとこうなります。
必要砂利量(kg) = 施工面積(㎡) × 厚み(0.05m) × 比重(約1.6〜1.8) × 1000
例えば、10平米の庭に5cm厚で敷くなら、約800kg〜900kgの砂利が必要になります。この厚みがあれば、日光が地表に届かず雑草を抑制できるだけでなく、砂利の層が空気を含み、地表の湿気を逃がす効果も期待できます。
また、砂利の下に防草シートを敷く「砂利下シート」という工法が一般的ですが、ここでシロアリ対策を強化するなら、シートを敷く前に必ず「土壌処理」を行うことです。
これが化学的防御です。
具体的には、シートを敷設する前の整地された土壌に、粒剤タイプや液剤タイプの殺虫剤を散布します。
これにより、シートの下が虫にとっての「楽園」から「危険地帯」へと変わります。
「一度敷いてしまったら、もう手遅れですか?」
そんなことはありません。液剤タイプの薬剤であれば、シートの上から散布して浸透させることも可能です(透水性シートの場合)。
ただし、効果の持続性は土壌処理に比べて劣るため、梅雨前や秋口など、虫が活発になるシーズンに合わせて定期的に散布する必要があります。
シロアリ対策と砂利敷きの活用法
防草シート
対策
殺虫剤
いらない
防草シートなしで砂利
適切な防草シート選びと殺虫剤の散布は、シロアリ対策として非常に有効です。しかし、管理が難しい場合は防草シートはいらないと判断し、防草シートなしで砂利を厚く敷く方法も検討しましょう。それぞれの環境に合わせた対策を行うことで、害虫のリスクを減らし、快適な庭を維持する方法を解説します。
- 害虫を寄せ付けない!防草シートの下に効果的な対策と殺虫剤
- メンテナンスが不安なら防草シートはいらない?防草シートなしで砂利を敷く方法
- 防草シートとシロアリ対策の総括
害虫を寄せ付けない!防草シートの下に効果的な対策と殺虫剤
ここで、より実践的な対策について深掘りしましょう。
防草シートの下に潜む虫たちに対抗するには、敵を知り、適切な武器を選ぶ必要があります。
使用する薬剤の選定は非常に重要です。
私が現場でよく使用するのは、「ピレスロイド系」や「ネオニコチノイド系」などの成分を含んだ土壌処理剤です。これらはシロアリだけでなく、クロアリやムカデ、ダンゴムシなど、地面を這う虫全般に効果があります。
- 粒剤タイプ: 効果が長く続くのが特徴です。シートを敷く前に土に混ぜ込んだり、表面に散布したりします。雨で成分が徐々に溶け出し、バリアを形成します。
- 液剤タイプ: 速効性があります。既に虫が発生している場合や、シートの上からメンテナンスとして散布する場合に適しています。
ただし、ペットを飼っているご家庭や、家庭菜園が近くにある場合は、薬剤の使用に慎重になる必要があります。その場合は、天然成分由来(例えばヒバ油や木酢液など)の忌避剤を使用するのも一つの手ですが、化学薬剤に比べて効果の持続時間は短いため、こまめな散布が求められます。
また、薬剤の使用に関しては、安全性に関する正しい情報を得ることが大切です。国立医薬品食品衛生研究所などの公的機関が公開している化学物質の安全性情報を参照し、用法用量を守って正しく使用してください。
https://www.nihs.go.jp/
私が以前、相談を受けたお客様で、「防草シートの下から得体の知れない虫が湧いてくる」とパニックになっていた方がいらっしゃいました。調査すると、シートの下に有機質の肥料(鶏糞など)が大量に残ったまま施工してしまっていたことが判明しました。有機物は虫の餌になります。
対策として、一度シートを剥がし、表土を数センチ削り取って(スキ取り)、無機質な山砂に入れ替えてから再度シートを敷き直しました。さらに土壌処理剤を散布した結果、虫の発生はピタリと止まりました。
この経験から言えるのは、「餌を絶つ」ことの重要性です。落ち葉や枯れ草、未熟な肥料などを残したままシートを被せるのは、虫に餌を与えて飼育しているようなものです。
メンテナンスが不安なら防草シートはいらない?防草シートなしで砂利を敷く方法
ここまで防草シートの対策を述べてきましたが、あえて「防草シートはいらない」という選択肢を提示することもあります。
特に、以下のようなケースでは、シートを使わない方が良い結果を生むことがあります。
- 庭の形が複雑で、シートのカットや固定が難しい場所
隙間ができやすく、そこから雑草が生えたり虫が入ったりするため、シートのメリットが活かせません。 - 将来的に植物を植える予定がある場所
シートを敷くと、後から穴を開けて植栽するのが手間ですし、土壌改良も難しくなります。 - 水はけが極端に悪い場所
シートが蓋をしてしまい、コケやカビの原因になります。
では、防草シートなしで砂利を敷く場合、どうすれば雑草や虫を防げるのでしょうか。
答えは「厚み」と「転圧」です。
先ほども触れましたが、砂利の厚みは命です。さらに、砂利を敷く前に地面をしっかりと踏み固め(転圧)、平らにすることが重要です。凹凸があると、低い部分に砂利が集まり、高い部分の地面が露出して雑草が生えてきます。
また、砂利の種類も重要です。
丸い玉砂利よりも、角張った「砕石(さいせき)」の方が、石同士が噛み合って地面をしっかり覆うため、防草効果や虫の侵入防止効果が高い傾向にあります。歩くと「ジャリジャリ」と大きな音がするため、防犯効果も期待できます。
「防草シートなしで砂利」のメリットは、何と言ってもメンテナンスの容易さです。
もし雑草が生えてきても、根が浅いので簡単に抜けますし、砂利を足したり、熊手で均したりすることで景観を維持できます。シートが劣化してボロボロになり、回収不能になるという将来のリスクもありません。
防草シートとシロアリ対策の総括
長くなりましたが、最後にこれまでの話をまとめさせていただきます。
庭づくりにおいて、「これさえあれば一生安心」という魔法の杖は存在しません。防草シートも素晴らしい資材ですが、使い方を誤ればシロアリや不快害虫の温床となり、あなたを後悔させる種になってしまいます。
大切なのは、ご自宅の環境(日当たり、湿度、土質)を見極め、適切な方法を選択することです。
- 湿気が多い場所や家の基礎周り:防草シートの使用は慎重に。敷くなら徹底した土壌処理を行うか、あるいは「ドライゾーン」としてコンクリートや砂利のみにする。
- メンテナンス:シートは敷きっぱなしにせず、定期的に端をめくって点検し、必要に応じて殺虫剤を使用する。
- 柔軟な思考:「防草シートありき」で考えず、場所によっては「いらない」と判断する勇気を持つ。
私が30年の職人人生で学んだ最大の教訓は、「自然はコントロールするものではなく、共生するものだ」ということです。虫を完全にゼロにすることは不可能ですが、彼らを家に近づけないための知恵と工夫は、私たち人間に備わっています。
どうか、この記事があなたの庭づくり、そして大切な我が家を守る一助となりますように。
夏草の匂いを感じながら、爽やかな風が吹き抜ける、そんな快適な庭を手に入れてください。




